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Prologue、花の灯火

抱えて来た荷物は少しだった。
僅かな路銀と日用品、身を守る簡単な武器。
そして、数日前に届いた一通の手紙。

――元気ですか?こちらは順調です。都会は広いな。

方向音痴な幼馴染みの、楽しげな一文。
腹立たしいやら心配やら、でも多分羨ましいのが1番で。

結局今、ここにいる。

旅立つ者たちの集う場所、夜露の村。
生まれ育った土地からは、離れた所。

「心配だから、行って来る。」

そう告げ置きしてやってきた。
けれど本当は、俺自身が望んで旅立ったのだ。
抱えてきた少しの荷物と同じくらい、少しの不安。
それを振り払うように、俺は片隅に立つ人へと声を掛けた。

「初めまして、少々お尋ねしたいのですが。」

青い月に呼ばれて浮き立つ光に包まれ、女性は微笑む。

――案内人ケイド。

それが、彼女の名前だった。


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1、どこにでも行ける翼

俺の生まれた地は封鎖された風土で人口も少ない。
自ら囲った狭い世界で、誰も彼もが見えない未来に怯え暮らすような片田舎だ。
言い訳をするつもりはないが、そんな環境が俺の排他的な性格に一役買っている事は否めないだろう。
村に同年代の友人はない。週に1度隣町から来る行商人の息子だけが、年の近い友達だった。
幼い頃から俺より背丈があって言動も柔和で、てっきり随分年上だと思ってるいたのに、
彼の年が俺と一つしか変わらないと知ったのはたった数カ月前の事だ。

「俺もそろそろ独立していい年齢だし、旅に出ようと思うんだ。」

――この方向音痴が何を言い出すんだ?

「なにをぅ!?」

心の声を押し止めておくつもりが、ついつい言葉になったようだった。
……とにもかくにも、そうして友人は旅立ち、少し遅れて俺も旅に出た訳だが。


―――余談がすぎた。

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2、飛行訓練

旅は人を大きくする、なんて良く聞く言葉だが…。
無性に腹立たしいのは、取り残された気がするからなのか。

「別に助けてくれなくても独りで倒せた。」

たった一本の矢で消えた怨霊の魂を憐れむからなのか。

「…ハイハイ、すいませんね。」

歩み寄って来て、右手を差し出すホンランを、軽く睨んだ。

「…礼は言わないぞ。」

「期待してないよ。」

いつでも笑みを絶やさぬ友人の手を掴んだ。ほんのり温かいその手を、優しいと思った。

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3、天上の青・地上の赤

空に手が届くとはこのような事を言うのだろうか?
高く高く舞い上がる。街が見る見るうちに小さくなる。
不思議な光景だ。こうして見下ろす分には人も怨霊も小さな点でしかない。
一見平和に見える彼の地で、あれらの点は日々争いを繰り返しているのだ。
溜息が出る。
いつか戦乱の無くなる日が来るのか、そう願うのは弱さなのかと。

詳しい事は覚えていないが、俺の両親は気の優しい性質だったと思う。
自分が傷付くとしても他人を傷付ける事は出来ない。
だから、旅の途中で倒れたのだ。
何処へ向かおうとしていたのかは知らない。
何故旅をしていたのかも分からない。
ただ彼等は俺を残してこの世を去り、俺は師匠に拾われた。

「あれ…?…どこだ、榧ーっ?!かーやー!?」

不意に記憶の反芻を砕くのは、少し慌てたような呼び声。
俺は動きを止めて声の主を探した。
ずっと下方で豆粒くらいのホンランが喚いている。
少しずつ高度を落としながら手を振れば、彼は安堵の表情を浮かべた。

「もー、目をはなすとすぐこれだ!」

ぶつくさぼやく言葉の端に、笑いが篭る。
飛行訓練に付き合ってくれるのは有り難いのだが、

(ダメ弓師が、いつまで子供扱いするつもりなのか…)

年齢は一つしか変わらないと言う事をもっと自覚すべきだと思った。

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4、大地の恵み

夢を見た。
真っ赤な夢。
鉄の嫌な臭いがする。
膝に覆い被さった優しい人達はピクリとも動かない、――永遠に。
容赦なく振り下ろされる鋭い刃が俺の前髪を揺らして…

――…ピタリと止まった。

雨が降る、父と母と怨霊の、赤く鉄臭い雨が。
誰もが倒れた赤い海にへたりこみ、ぼやける視界に、
炎の札を手にした人影が見えた。
男性のようだった。
俺の姿を認めると詠唱を止めて此方へ駆け寄り、

「……済まない、間に合わなくて………」

誰だか知らないその人は、血で汚れるにも拘わらず、俺をぎゅっと抱きしめた。
それは、師匠と出会った日の事。
幼い俺は成す術もなく彼にしがみつき、大声を上げて泣いた。
――ただ、泣き続けた。

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5、迷子の狐

長老の導きで日用品の生産を覚えた俺は、
怨霊狩りの合間に大地の恵みを採取するようになった。
材料さえ集めていけば街の職人達が作成の手助けをしてくれる。
出来が良ければ買い取ってくれる事もあり、大変役に立つ技術だ。

今日も採掘道具を使って枯れた木の根を掘り起こす。
武器・防具・装飾・薬のうち、最も得意なのが防具の作成だった。
村にいた頃は繕いの仕事で生計を立てていたので当然と言えば当然なのだが。

「相変わらずよく出来ているわね、星二つよ。」

裁縫師に褒められ、嬉しくなる。
作成する物には出来によって星が与えられ、星が多ければそれだけ性能も良い。
星3つの高級品は身につけた際、青き光りを放つと言うがまだお目に掛かった事はない。

「この調子で精進なさいな。」

励ましの言葉に頷いて、俺はその場を後にした。

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6、近く

自分が生きて来た世界の狭さを知った。
己がいかに小さな枠の中で過ごして来たのかを。
…改めて、思い知らされた。

「何だか済みません。」

俺は今、森で出会った妖族の少女、ヌサを抱えて飛んでいる。

「否、お気になさらず。」

常に紳士たれ、廻る縁を大切にせよと言うのが師匠の教えだ。
ホンラン以上に方向音痴の少女を置き去りになど出来ようものか。
祖龍の城まで送るとは行かずとも、
せめて樹下の都までは送り届けようと申し出た結果である。
少女は目を輝かせて頷いた。

「いやー、ホンット助かりますー。」

女の子を抱き上げるのに手袋なしでは失礼だろうか、とか
余り高く飛んで怖くはないだろうか、などこちらの心配も露知らず、
彼女は俺の首に手を回して掴まり、はしゃいでいる。
妹がいたらこんな感じなのかもしれない。
テレボート師の目前まで少女を運んでそっと降ろした。

「あー、いやはや、色々お世話になりました!」

体を折って頭を下げる相手へと、首を横に振って見せる。

「いえいえ…もう迷いませんように。」

頷く少女に笑顔を返し、
テレボート師には彼女を間違いなく祖龍の城まで届けてくれるよう念を押した。

「あ、榧さん!」

詠唱による光りがヌサを包み始めた所で、急に声が上がる。
道具袋を漁って何かを取り出し、こちらへ投げた。
きらきらと小さな石。片手で掴み取る。

「お友達――…」

シュン、――と少女の姿が消えた。
笑顔と言葉と、キラキラ光る小さな石を残して。

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Author:榧
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Character:うさぎ至上主義。

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