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40、冷戦

祖龍の城に出てきて幾月。地理に慣れ、人混みにも随分耐性がついて来たと思う。
知合いも増えた。仕事だって、自分でそこそこはこなせるようになった。
そんな俺の様子伺いに時折訪ねて来るホンランが、
部屋を片付けろだとか食事をちゃんと摂れだとか、たまには顔を見せに来いだとか。
いちいち残して行く小言を聞き流すのも上手くなった。
呼吸をして、生活をして、他人と関わっている。
日々概ね良好、何の問題もない…ちゃんと、生きてる。

(ただ、貴方がいない以外は…)

宮付きに飾っていたメッセージカードを指先で突付く。パタン、と癖のある達筆が伏せた。

(ホンランに渡して送って貰うくらいなら、直接俺に手渡しすれば良いんだ、馬鹿師匠!)

心の中で悪態吐いてふと見た先、窓硝子に映った自分の表情が随分不貞腐れている。
まるで幼子のようだ。…苦笑が漏れる。俺は大きな溜息をつくと、ゆっくり立ち上がった。

(気分転換だ、どこかに出かけよう…)

外出準備に取り掛かろうとしたその時である。

――カーヤさーんっ!聞こえますかーッ!!!

元気の良い、少年の声。テーブルに置きっぱなしの箱からだ。
驚いて動きを止めると、その間にも大音量の呼び声が部屋を揺らしている。

「煩い!…叫ばなくても聞こえる、何用だ!?」

余りの騒がしさに思わず怒鳴り返せば、ひゃあ、と竦むような声が聞こえた。
続けて消え入りそうな“ゴメンナサイ”の一言と、あとはただ沈黙。

「…はぁ…悪い、怒ったんじゃなかったんだ――それで、タグさん?…要件は何です?」

気まずさに小さく吐息を洩らして己の大人げなさを詫び、声音で知れた相手の名を呼ぶ。
箱の向こうはホッとしたように一拍置いて、朗らかに言葉を綴り始めた。

――あ、ウン。実はお手伝いを頼みたくって。今から塔婆の寺院まで来れる?

「塔婆の寺院?…嗚呼、構いませんよ。30分以内には到着します。」

――良かった、助かるよ!
   …あ、あんまり急がないでいいから気を付けて来てね、何かあったらボク…

「は?君じゃあるまいし。何もないよ、でも有難う。…では、支度をして向かいます。」

用件だけの短い通信を切って準備を始める。どちらにせよ、気晴らしがしたかった。
今は何も考えずに、狩りをしているくらいが丁度良いと思った。
 
 

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39、作戦A~ver.HongLang~

…危なかった。
ウサギと戯れる榧の背中を眺めながら、俺は心の中でそう呟いた。

あ、どうも初めまして。知り合いの方はこんにちは。
俺の名前はホンラン。エルフ族の旅人として世界を巡っている者です。職業は弓師…
って言いたいところですが、幼馴染のお目付け役兼胃袋管理人と言うのが正しいかも。

「…何ブツブツと独り言を言っているんだ?」

そして向こうからその美貌に怪訝な表情を浮かべて声をかけて来るのが、幼馴染の榧。
俺と同じくエルフ族で、外見だけで人をだませる眉目秀麗な精霊師…
とは名ばかりの、羽根のついた魔導師だと、勝手に認識している。

「うん?…別に何でもないよ。それより、そろそろ帰ろうよ、榧。ウサギも遊び疲れてるよ?」
「……嗚呼、了解。」

さて、何で今俺がここ、城南の金華婆々の所にいるかと言うと、話は今朝に遡る。
ある人物(と言うかもう、この人が何もかもの原因なのだが)
に頼まれて代理で贈った品物が、榧の手元に届いたのである。
それは榧にとってこの世界で誰よりも大切で逢いたくて、誰よりも憎い相手からの贈物だ。
その人物は自分の居所を榧に悟らせたくなくて、
敢えて俺からの贈り物として荷物を出すよう指示してきたのだが、
恐らく同封したメッセージカードの筆跡で榧には本当の送り主が分かったのだろう。

(ホント、困った人たちだよ…)

こうしてウサギと遊んでいる姿だけは邪気のない幼馴染の背中をただ眺め遣る。
俺が榧と出会ったのは、もう随分昔の事だ。行商人だった父親が得意先としていた村に、
彼らはやってきたのである。出会ったころの榧は女の子のように愛らしく、
丸くてちっこくて身長なんか俺の腰くらいまでしかなくて、舌っ足らずの口達者で、
もー、ホントとにかく可愛かったものだ、性格以外
榧には二親がいない。何かの事故で失って、件の人物に拾われたらしい。
長い黒髪の魔導師で、男の俺から見てもハッとする様な色男だった。
当時から、榧の世界観は非常に狭く偏っており、かつ深い。
内側に向かって底なく潜って行く類の性質だ。
その内側の中心に、彼がいる。育ての親であり師匠でもある彼が、贈物の主なのである。
またこの人が妙に人好きするというか、不思議な魅力を持った人物で、
俺にとっては良い友人なのだが、人を使うのが上手い上に人使いが荒いくて今に至る。

(もー、いい加減答え出して、子守くらい自分でしてほしいよ…)

まぁ、俺はそんな友人もこの幼馴染も気に入っているから別にいいのだけれど、
件の彼と定期的に連絡を取っている事が榧にいつバレるかと思うと気が気じゃない。

「悪くない一日だった。…礼を言ってやっても良い。」

帰り道。回想に浸っていた俺と並んだ榧が、偉そうに言った。
長い睫毛を伏せぎみにして、視線を合わせずぽつりと、ぶっきらぼうに呟く。

「…はいはい。」

思わず、笑みが漏れた。この幼馴染は素直じゃない。今の台詞を直訳すると、こうだ。

『今日は良い一日になった、有難う。』

何がこうも彼を捻じ曲げたのか知らないが、面白い事この上ない。
榧が俺に対して偉そうなのも、信用して甘えて貰えていると思えば許せる気がする。
かの魔導師も、こんな俺を信頼してくれているのだろうか。
それなら、もうしばらく子守を引き受けても良いと思える。

「夕飯はトマトシチューが良い。」
「?……それは俺に作れ、と?」
「当然だ。」

…………やっぱり、早く帰って来て下さい………。

 

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榧

Author:榧
Server:ベテルギウス
Job:精霊師
Guild:BLOOM
Character:うさぎ至上主義。

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