FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

19、体育座り

青い光が俺の傷口を優しく包んで痛みを吸い取る。
柵の向こうで手招きをするトモイ氏がくれた回復術のお蔭だ。
俺は囲いを飛び越えると碧眼の精霊師へと歩み寄り、頭を下げた。

「有難う御座います、助かりました…。」

トモイ氏に助けられるのはこれで2度目である。
前回、ホンランと共に蠍の洞窟に乗り込んだ時も、この方に助けて頂いた。
俺が無謀なのか、彼のタイミングが良いのか謎だが…
とにかく、危うく死ぬ所で現れる雄姿に、幾ら感謝しても足りない。

「いあいあ。…でも、こんな所でリンクする怨霊相手に何やってたんです?」

礼の言葉に軽く首を横振りして答えるトモイ氏がふと、首を傾げた。
俺はハンターウルフと対峙する事になった経緯を簡単に説明する。
何も知らなかったとはいえ、知らないままに行動する無謀さを反省しつつ、
助けてくれた碧眼の精霊師へと、再び頭を下げた。

「ああ、気にしない気にしない。それより榧さん、ちょっとこっちに来て。」

畏まる俺に、風に抜ける風鈴の音の様な笑顔で答えた彼が、
徐に木の棒を拾う。呼ばれて近寄れば、長いコートを払って地面に腰を屈め、
トモイ氏はごいごいと地面に何やら描き始めた。

「リンクってね、こういう事なんですよ。」
「嗚呼、なるほど…!」

隣にしゃがみ込んで描かれる図を眺め、彼の言わんとする事を理解した。
どうやらリンクと言うのは、同じ種類の怨霊同士に仲間意識があり、
ある怨霊が攻撃を受けると同じ種類の他の怨霊たちが、
仲間を助ける為に飛びかかって来ると言う事らしい。
俺の理解を読み取ったトモイ氏は、他にも何やら違う種類の図を描き出す。

「こっちは、アクティブね。」

攻撃を受けるまでは何者が通ろうと知らん顔の怨霊に対して、
自らと異種の者を認めた時点で攻撃を仕掛けて来る怨霊をアクティブと呼ぶらしい。
俺が道端でよく引っかけるあれだ…。
狂狼の洞窟前で男2人、しゃがみ込んでの短い講習会を終えると、
彼はすくっと立ち上がった。

「で、榧さんはハンターウルフの肝がいるんでしたよね。」

そう言うが早いか、素早く詠唱を始める。
俺が何かを言う間もなく、敵を引き裂く光が辺りを包み、
彼が最初に現れた時同様、何匹かのハンターウルフを一遍に蹴散らした。

「ほい、出ました。」

そもそもこの離れた距離から術が届くのはどう言う事なのかとか、
涼しい顔してやる事はなかなか凄いなとか、色々な思いが脳裏を過るが
何も言えずに口をパクパクさせる俺を爽やかな笑顔で見遣り、
彼は怨霊の散った地面に残った何かを指さした。

「あの…何から何まで有難う御座います。」

俺は再び柵を越えると彼の指したハンターウルフの肝らしき物体を拾い、
礼の言葉と共に頭を下げる。

「ちょっと通りかかっただけですから、気にしなくて良いですよ。」

さらりと述べ、彼は以前出会った時同様騎乗ペットに跨って片手を上げた。

「じゃ、また。」

そのまま、何事もなかったように立ち去って行く。

(うわー…カッコいい……)

危険な時に颯爽と現れて涼しい笑顔で去って行く彼の背中に、
俺は思わず両手を合わせたくなった。
19、体育座り

ハンターウルフの肝を開墾者の村に持ち帰った俺は薬調合師のアルダーを尋ねた。
布に包まれたあまり気持ち良い物ではないそれを手渡す。

「これで間違いないのだろう?」

首を傾げて尋ねると、薬調合師は驚いたように眼を見開いて、
感嘆の溜息を吐き出しながら答えた。

「こりゃ驚いた、本当に持って来るとは思わなかったよ…」

てっきり野垂れ死んでると思った、等と失礼な言葉を連ねて
薬調合師は肝を丁重に受け取る。内心むっとしたが、
実際あそこでトモイ氏が現れなければ俺は野垂れ死んでいたに違いないので、
ここは黙って何も言わない事にした。

「子供1人の為にまぁ、よく頑張るね、兄さん。」

その心意気をうけて私も良い薬を拵えましょう、と続ける男の台詞が、
実は頑張っていない俺の胸にザックリ刺さる。

(気持ちだけは頑張ったんだが、実際はトモイさんのお蔭なんだよな…)

何となく情けない気分で、張り切る薬調剤師の手元を眺めながらただ苦笑した。
材料は乳鉢や薬研で砕かれ、扇形製丸器を使って錠剤に形を変えて行く。

「よし、出来た!獣HP回復錠薬。…持って行きな、お代は要らないから。」

完成した錠剤を受け取って代金を払おうとする俺に向かって、
アルダーは首を横に振りながら笑った。…世の中には目に見えない温もりがあって、
そう言ったものが人の心を行き来するから、だからこんなにも美しいのだと。

「有難う、助かります。」

そう思えて、俺は微笑んだ。手を振る薬調剤師を背にして、
待ち侘びる少女の元へ急ぐ。急ぎつつ、錠剤を眺めてはたと立ち止まった。

(…・獣………?)

この薬品の事を、アルダーは何と呼んだだろう?
確か、獣HP回復錠薬とか…言っていなかったろうか。
妖族の男性は確かに獣の姿をしている訳だから、間違いではないのかもしれないが…
何か胸に引っ掛かる物を感じながらも、少女を尋ねる。

「やあ、ジル。…草ちゃんの薬を用意したよ。」
「有難う、お兄さん!」

屹度不安で気が気でなかったのだろう、少女は俺が何かを言うより早く、
頭を下げると差し出した錠剤を受け取った。

「早く良くなると良いね、将来のお婿さんなのだろう?」

明るくなった少女の表情に、思わず揶揄いの言葉を漏らして仕舞う。
と、少女は怪訝そうに眉を顰めた。…不快にさせた、と言う顔ではない。

「…草ちゃんは、鷹だよ。――私のペットだ。」
「……え…、嗚呼、……そう……………………・。」

今度は此方が呆気に取られる番だ。
「獣HP回復錠薬」の意味を理解して、俺はただ苦笑するしかなかった。
ペットであっても、人であっても、大切なものに違いはないのだから、
命を掛けた価値はある、………はずだ…。

「私はいつか草ちゃんと一緒に旅をするのが夢なんだー。」

薬を与えられ、苦しみから解放された小さな鷹を俺に披露してくれながら、
ジルは楽しそうに言った。その笑顔を見れば、自分の行動に後悔はなくなる。
俺はつられるように微笑って、そうか、と頷いた。

「だけど草ちゃんはまだ小さいから、本当は鷹匠に預けなくちゃいけないんだけど…」

夢を語る子供の顔は輝いている。が、そこに一点の曇りが生じるのは、
幼いからこそ手の届かない、だが年を経ては失ってしまう、
夢と言う難儀な物への隔たりが故だろう。
鷹匠を生業にしている人物は世界に然程いる物ではない。
この辺りであれば、祖龍の城にいる飛行師、リショウがその技術を持っているくらいだ。
開墾者の村から祖龍の城まで、子供の足ではとても遠い。
しかも、その道のりには怨霊がうようよしているのである。

「…乗り掛かった船って言葉があるのを知っている?」

俺は苦笑して、少女に尋ねた。
ジルはこくんと頷いて、だが俺の言葉の真意は掴めずに首を傾げる。

「俺が草ちゃんをリショウに預けて来る。
 それからまた、連れて帰ってくれば良いんだろう?」

しゃがんで相手に視線を合わせ、ね?――と首を傾げて見せると、
少女は大きな目を更に大きく見開いた。

「…ありがとう!!」

それから、飛び付くように俺へと抱き付いて、感謝の言葉を述べる。
少女の小さな頭をよしよしと撫でながら、俺は笑った。

(此方こそ、有難うだ。…絶対の信用を頂けて光栄ですよ、お嬢さん。)

そして、心の中でそう呟いた。

Comment

2008.10.24 Fri 00:44  |  たまには

誰かのお世話になっちゃうのもいいんではないでしょうか?
世の中知らないトコで持ちつ持たれつしてるんでしょうね。

…と、お世話になりっぱなしの身で言ってみました(汗)

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2008.10.26 Sun 01:59  |  照れる。

毎回のことながら照れながら見ています(*ノノ)
ふふふ、榧さんやホンランさんの前(Turさんの前でもかも…)かっこつけていますがね、フレやGの人と一緒だともれなくヘタレです。

  • #mQop/nM.
  • トモイ
  • URL
  • Edit

2008.10.26 Sun 13:55  |  いらっしゃいませ!

ようこそ駄文の世界へ…

タグさん
そうですね、屹度みんな色々なところで持ちつ持たれつしているんでしょうね。
俺も誰かの役に立っていると良いのだけれど。

トモイさん
照れてる…可愛いです……(萌)
俺から見たらいつもカッコいいトモイさんも、実はヘタレた一面をお持ちなのですね!
……いつかそんな貴方に会ってみたいです!

  • #-
  • URL
(編集・削除用)
管理者にだけ表示を許可

Trackback

URL
http://kaya0629.blog25.fc2.com/tb.php/103-8bc44878
この記事にトラックバック(FC2Blog User)

プロフィール

榧

Author:榧
Server:ベテルギウス
Job:精霊師
Guild:BLOOM
Character:うさぎ至上主義。

カレンダー

11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

いらっしゃいませ。

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
Copyright © 榧
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。