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31、小運動会

何とか制限時間以内に頭髪を届ける事の出来た俺は、
無事手に入れた饅頭を持て余して溜息をついた。
依頼主に渡す者に加え、俺にもと差し出された菓子…

「良かったね、カヤさん!…でも何で濡れてるの?」

動物と存分に戯れ、満足顔のTaglissが無駄にイイ笑顔で歩み寄って来る。
キラキラした笑みに何故だかイラっとして、俺は思わず友人の頭を小突いた。

「イデッ!――今度は何?!」
「あ…済まない、何となくつい…」

不満げな声にハッとして軽く詫びる。そんなに力は入れていないつもりだが、
涙目になって痛みを訴える相手へと貰った饅頭を横流す。

「コレやるから、泣くな。」
「……いいの…?……ありがとう!」

甘いもので機嫌をなおしてくれる辺り、単純で良い。
そもそもさほど甘い物が好きな訳でもなければ、
髪の毛と交換した饅頭を食べる気にはなれなかった俺としては、
それの処分先が決まって大助かりである。
傍らで機嫌良く菓子を頬張る友人を見ていると
何だか気が抜けて湖の岸に座り込んだ。
水を滑って届く風は冷たい。

「濡れたままこんなトコにいたら風邪ひくよ、カヤさん。服干したら?」

無意識に小さなくしゃみを零す俺を咎めてTaglissが言った。
そうしたいのは山々だが、着替えの衣類もタオルも宿に置いたままである。

「ご心配痛み入ります、だが生憎…着替えまでは持ち歩いていないんだ。」

心遣いに感謝しつつ苦笑で答えれば、少年はきょとんとした表情になって、
さも当たり前のように言い放った。

「全部脱いでパンツになったらいいんじゃない?」
「誰がやるかっ!!!」

間髪入れずに否定する。――そう言えば彼はパンツ戦士だった…
そうでなくても疲労感たっぷりの所に妙な精神的ダメージを蒙って、
俺はただ只管大きな溜息を零した。
 
 
 
31、小運動会

老けこむつもりもないのだが、何分寄る年波には勝てないもので…
俺は膝に腕を預けると、肩で大きく呼吸を繰り返した。
咳に混ざって肺からざらついた音が零れる。

「ほらほら、カヤさん!…こっちだよー、もうお終い??」
「待てっ…て、その中に…―――」

追っかけっこ!


離れた場所から投げかけられる声に視線を向けると、楽しそうなTaglissの姿。
俺の上着を闘牛士のようにひらつかせながら、追って来るのを待っている。
距離を放しては止まって待ち、追い付けばまた逃げて…
まるで飼い主をおちょくる子犬の如し、だ。
しかし、そもそもホワイトカラーの俺が、
何故完全肉体労働派の彼を追っているのかと言うと…

「だって、濡れたままじっとしてたら風邪ひくよ。」
「――だから?」
「脱ぐの嫌なら走るしかないでしょ!」
「何だその良く分からない理屈?!」

此方の是非も問わず、畳んで置いていた俺の上着を引っ掴んだ奴が
突然駆け出したからである。

(あんまり振りまわすなよ、内ポケットに…)

知らん顔して放っておけば良いのかもしれない。
でも、その上着には俺にとって非常に重要な物が入っていた。
下手に振り回されて風にあおられたら、簡単に飛んで行ってしまう。
やっと追いついて、思いっきり腕を伸ばした。
が、するりとかわされ、また距離を置かれる。

「カヤさん、惜しい!」
「――ちっ!」

普段の運動不足が祟ってか、いい加減眩暈がしてきた。
それでも涼しい顔で逃げ惑う友人に対して僅かな殺意が目覚める。

「いい加減に…っ!」

大きく息を吸い込み、トルネードの詠唱をしようとしたその時。

「男のコって、いいね~。」

ふわりと辺りに響く、優しい音。鈴のように美しい声色。
振り向けば、桜の様な唇をほころばせて微笑む、精霊師の乙女が立っていた。

「とぅるさん…」
「…ぅえ?」

俺の視線を追って乙女の姿を認めた友人も、
恐らく驚きを示すであろう妙な声を発して動きを止める。
泉の乙女はTaglissにゆっくり歩み寄ると、返してあげてね、と言葉を添えて
彼の腕から俺の上着をそっと受け取った。

「はい榧さん、これ。――さっきはありがとぅ。」

乙女の腕を経由して、上着が俺の手許へと戻る。
受け渡しの際、彼女の細い指先と僅かに触れ、思わず赤くなる。

『ねね、カヤさん、――このどエラい美人さん、知り合い??』

ツツツ、と寄って来た少年戦士から小声で耳打たれてはっと我に返ると、
軽く頷いて肯定の意を示す。

『嗚呼。――以前、道を教えて頂いた事があってね。』

別に小声で答える必要もないのだろうが、思わず声が小さくなる。

「どうしたの??」

此方の行動を眺めて、麗しの乙女は不思議そうに首を傾げた。
細い指先を頬に宛て、小首をひねる姿がまた愛らしい。

「あ、否…此方こそ有難うございます。」

咄嗟に礼の言葉を述べて誤魔化す。
どう致しまして、と笑顔を浮かべる様は、まるで春を呼びこむ花のようだ。

「ええっと…、そこのキミは、榧さんのお友達?」

不意に乙女がTaglissを見た。
大きな緑の瞳に見つめられ、少年は背筋をピンと伸ばす。

「ハイ!…えと、はじめまして…ボクは剣仙城から来た戦士で、Taglissと言います。」
「うんうん、元気だねぇ。私はとぅる。精霊師だよ、宜しくね?」

差し出された白くて細い乙女の右手を、大きくて張りのある少年の手が包む。

「わぁ、やっぱりおっきいねぇ、戦士だもんねぇ。」

少年の手を取ったとぅる嬢が、楽しげにそれを開かせ、自分の掌を合わせて比べる。

「えへへ…♪――まあ、それなりには。」

悪い気のしない様子で、Taglissが答えた。
あっという間に打ち解けた2人が、楽しげに会話をしている。
こう言った和やかさと言うか、気安さと言う物が、どうにも俺には欠けている。

(――くっそう。…良いな、前衛。)

そんな問題でもない。
心の中で悪態付く俺に気付いた様子はないのに、ふと乙女が此方を向いた。

「榧さんも手、貸して?」
「…??」

言われるままに左手を差し出せば、彼女はその整った左掌を俺の手に当てる。
肌理細やかで細い指の感触に、ぎゅっと心臓が縮む。

「うーん…追っかけっこも、手の大きさもTagliss君の勝ち!」
「いえいっ!」

無邪気に笑うとぅる嬢と、嬉しそうに飛びあがるTaglissの姿に、
俺は小さな苦笑を浮かべた。
気が付けば、濡れた衣類はすっかり乾いていた。

Comment

2009.03.29 Sun 17:35  |  テレッテレの榧さんw

とぅるのお茶目に反応~かーわいいなぁ!!こんにゃろめwww
追う事をせず「アホか」と言い放ちそうなのに、
そこまで追いかける程に大切な何かってなんだろ~♪

そしてタグさん、ほんとに子犬みたいだwww

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.03.30 Mon 08:52  |  アレ?

まさかの、タグさんとのウフフアハハ湖岸デートですか!?;
なっなんでやねん!ww
それにしても、タグさん腹筋すっごいですね!

  • #Ij9WZHRI
  • ツメレンゲ
  • URL
  • Edit

2009.03.30 Mon 16:19  |  

とぅるにギュッされて、ニヤニヤだったろうなあww

タグさんわんこなだけに、かけっこは得意だったのね。

  • #-
  • エンリケ
  • URL

2009.04.02 Thu 00:43  |  いまだに

パンツネタを引きずらないで(涙)!!
はいてるよ!ちゃんと穿いてるってば!!

そして、カヤさんのまわりには綺麗なおねーさんばかり…羨ましい。

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2009.04.05 Sun 12:38  |  いらっしゃいませ

ようこそ、駄文の世界へ…

れもんさん
そらもー、タジタジですよ、お茶目なとぅるさんには敵いません。
そして大事な物は後日出てくる予定…w

兄さん
そのまさかです、ってかあれはウフフアハハではないですよ、
確実にゼーゼー言ってます。ww

エンリ姐さん
タグさんはあまり頭の良い犬ではないですが(←酷)
運動能力だけは高いと思われますw

タグさん
だってパンツ戦士の印象が強すぎるよ…
綺麗なお嬢さんが沢山なのはたしかに認めるけど、
別に俺の周りだけじゃないとおもうよ。

  • #-
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