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33、胃袋管理人

そろそろ日も暮れる頃、祖龍西門でホンランと落ち合った俺は、
夕飯を御馳走になる前に用事を済ませたいからと、
幼馴染を連れ立ってビスカリの元へ急いだ。
饅頭には砂糖がふんだんに使われているから足は速くないだろうが、
余り持ちっ放しにしていて味が落ちても困る。何より、この依頼は早く済ませたい。

「ご依頼の品、持って参りました。」

相変わらず人の通行に差し障りある場所に立つ女性へと歩み寄ると、
俺は軽く頭を下げて饅頭を差し出した。

「おお、大儀であった!」

ビスカリはそれを嬉しそうに受け取り、じっと眺めている。
それから突然、甘味へと一口齧りついて眉を顰めた。

(ねー、榧…この人どうしたの??)
(そもそも少し個性的なご婦人の様なんだ。)

それまで様子を見守っていたホンランが急にツツツ、と寄って来て
怪訝な表情を浮かべて小声で尋ねるので、俺も小声で遠回しな答えを返した。

「これは違う!」

と、突然女性が鋭い声を上げる。
渡した饅頭を一気に頬張り、ゴクンと呑みこんで不満げな表情を浮かべた。

「その割には、今一気食いしましたよね…?」

思わず口が滑る。が、幸い相手の気にならなかったようで、
彼女は一つだけ残った饅頭を俺に押し付けると
相変わらず高飛車な態度で次の指令を言い放った。

「祖龍の城にも、饅頭に造詣の深い人物がいるらしいのよ。
 城南のハーマスカと言う男だ、話を聞いて来て欲しい。」

断りたいのは山々だが、どうにもお断り出来る雰囲気ではない。
俺は渋々頷くと、一つだけ残った饅頭を手に、幼馴染を引き連れて城南へと向かった。
ハーマスカはどうやら老舗の露天商らしい。通り掛かりの人に尋ねると、
すぐに居場所が分かった。どうにも点心屋台を開いている男だそうで、
指定された場所からは美味しそうな香りが漂って来る。

「あの、済みません、ハーマスカさんですか?」

そろそろ月も昇ろうかと言う時刻、屋台を仕舞う準備中の彼は
俺の声に気づいてぱっと顔を上げた。見た感じは割と普通の人である。

「ああ、そうだけど?何か用事かい、兄ちゃん。」

作業を中断させられてやや不機嫌な男が訝しげな様子で此方を見ている。
俺はふたたび詫びの言葉を述べると、ビスカリに預かった饅頭をそっと差し出した。
それから、彼を訪ねた経緯をゆっくり話した。
 
 
 

33、胃袋管理人

俺の話を最後まで聞いて、ハーマスカは興味深そうな笑みを浮かべると
顎に手を当ててううん、と唸った。

「あの女、また面白い事を考えてるな。…いいよ、協力してやらぁ。」

承諾の返事をするや否や、差し出した饅頭をばくりと頬張る。また一気食いだ。
咀嚼しながら首を右や左に捻る相手の言葉をただ待つ。

(ねぇ、榧…この人達、ホント大丈夫…?)

不意に傍らのホンランが不安そうな小声を発した。

(余り大丈夫じゃなさそうだが…悪いな、ホンラン。無理に付き合う事無いぞ?)

黙って容姿に付き添ってくれる幼馴染に申し訳なくなって、思わず小声で答える。
すると弓師は首を横に振って柔らかく笑い、

「夕飯、作ってやる約束だからね。」

と言った。

「こりゃいけねぇや。」

露天商の突然上げた大きな声によって、和やかな雰囲気は急に打ち砕かれる。
どうしたのかと尋ねると、彼は険しい表情で低い唸り声を上げた。

「作り方は悪くないんだ、でもねぇ、材料がてんでなってない!」

何故だかお怒り気味な相手の台詞に思わず済みませんと頭を下げるものの、
そもそも俺は悪くない。しかし、分かれば良いんだと呟いて男は大きく胸を張った。

「兄ちゃんにも食わせてやろう、本当の饅頭ってモンを!
 だがなぁ、それにはちゃんとした材料がいるんだ。」

いや、いりません。…とは言えない雰囲気だ。
ちょっとひとっ走り、と言葉を添えて彼の指定して来た材料は以下の3つ。
剣仙城の長老が生産権を持つ高級な小麦粉、
樹下の都の長老がありかを知っているという清泉水、
万獣の要城の長老が特産品として推し出しているという高級な砂糖。
…ちょっと、なんて生易しいお使いではない。
背後から幼馴染の断れオーラがひしひしと伝わってくる。
だからと言って今更お断り出来る状態ではなく、俺は渋々依頼を受けた。

「あーあ、断っちゃえばよかったのに。」

大半の店が本日の営業を終えようとする時刻。市場にはお手頃価格の商品が並んでいる。
いわゆる残り物の中から上質なキャベツを掘り出して幼馴染は苦笑いを浮かべた。

「出来るか。ここで断ったら、今までの苦労が水の泡になる。」

友人の大きな手に乗ったキャベツを奪って支払いを済ませながら溜息混じりに答える。
その調子で彼の選ぶ食材を次々横取りして会計をしながら、
俺はこれまでの経緯をざっと話して聞かせた。

「そうか、そりゃ大変だったな…って、榧…お金…」
「良い、どうせ俺の胃に入る。」

話は大人しく聞きながらも、次々に清算される品物に
困った様子で紡ぎだされるホンランの言葉へと台詞を被せて遮る。
買い物袋を両手に抱えると、そりゃそうかもしれないけど、
とまだブツブツ言う弓師を背にして俺は歩き出した。

「あっ!いた!!カヤさん、酷いよ!!!」

と、急に名を呼ぶ声が聞こえる。見れば向こうから、湖岸の村に置き去って来た戦士、
Taglissの駆けて来る姿があった。

「あれ、タグさん??…榧と知り合い?」
「あっ、ホンさんもいる!?…知り合いって、ホンさんも?」

勢い良く走って来る少年を見て、一歩後ろの幼馴染が驚きの声を上げる。
同じようにTaglissも、弓師に気づけば目を丸くした。どうやらこの2人、面識があるらしい。
久し振りだとか無事祖龍に着いたんだねとか、俺をそっちのけで盛り上がっている。

「…お腹空いた……」

何時まで待っても終わらない四方山話を暫く横耳に聞いていたが、
そのうち空腹に眩暈を覚えて思わず呟く。すると、
はっとしたように此方を見て、ホンランは酷く申し訳なさそうな表情を浮かべ頭を下げた。

「ごめん、榧。…あ、タグさんも家で一緒に夕飯食べる?お好み焼きだけど。」

…と言った訳で。俺とTaglissは今、ホンランの部屋にいる。
部屋の主は熱した鉄板をテーブルに広げ、作ったお好み焼きのタネをそこに流す。

「別に俺が悪いコトした訳じゃないのに、榧がお腹空かせてると自分の管理不行き届きで
 すっごく悪いコトした気分になるのはなんでだろうな…。」

今更何をしみじみ呟いているのか。
弓師に渡されたヘラを握って構え、俺はちらりと幼馴染を見遣った。

「最近、俺の胃袋は君に任せきりだからな。良い奥さんになれるよ、ホンラン。
 嫁に行き遅れたら俺が貰ってやるから安心しろ。」

ええっ!?…と叫んだのがホンランだけならまだしも。

お好み焼き
「そんな、人を胃袋管理人みたいに…」
「カヤさん、ボクも料理出来るよ!?」

Taglissまで立ち上がって抗議するのはどうなのか。そこは張り合う所じゃないと思う。

「タグさんとホンランのどっちかを嫁に貰うしかないなら、俺はホンランの方が良い。」
「嫌だ、榧みたいに手のかかる旦那はいらん。どうせならタグさん旦那にするよ、素直だし。」
「ホンさんはお父さんだよ…。ボクは榧さんのお嫁さんにならなってもいいけどな…。」

誰一人意見が合わない。そもそも、野郎3人でするには酷く不毛な会話だ。
お好み焼きがじゅうじゅうと、美味しそうに焼ける音まで虚しくなってくる。

「…なぁ、ひとつ聞いて良いか?」

焼き上がったお好み焼きにヘラを刺して一口サイズに切りながら、
俺はふと頭に浮かびあがった疑問を口にした。

「2人とも自分が旦那の立場になろうって気はないんだな?」

あっ、と今気付いたように弓師と戦士が顔を見合わせる。
鳩が豆鉄砲でも喰らった様な表情の友人らを見遣り、俺はくすり、と笑った。
 
 

Comment

2009.04.26 Sun 22:47  |  素敵な三角関係!w

お・・・おもしろすぎw( ≧∇≦)ノ
なんて素敵な三角関係なんでしょ!
二人が旦那の立場になろうと考えないとゆーか
榧さんを嫁にと考えられない関係なのか?!ww

確かにこのクエって、内容が内容なもんで
「ああ><断ってしまいたい!」と思ったわ~~~!

実は三人とも苦労人に思えて仕方ないれもんでしたw

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.05.01 Fri 13:22  |  いらっしゃいませ

ようこそ、駄文の世界へ…

三人共何気に阿保なことばかりしてますよねww
苦労人かどうかは別ですが。
そのうちここに玲紋さんが混ざってカルテットに……www

  • #-
  • URL

2009.05.02 Sat 00:41  |  まんじゅう

イッキ食いするとヒドイ目にあうよ・・・・・

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2009.05.04 Mon 14:10  |  いらっしゃいませ

ようこそ、駄文の世界へ…
タグさん、饅頭一気食いしたことあるの……?(汗)

  • #-
  • URL
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