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34、春の風物詩

その部屋を出る時、ホンランがまたね、と言った。
深夜の街の街の曲がり角でまたね、とTaglissが手を振った。

(またね、か…)

初年の背が見えなくなるまで手を振り返してから心の中で呟く。
未来に繋がる言の葉ひとつ。ひらひらと、胸に灯る。
さようならもまたねもなく消えた人を思い起こした。
そんな小さな言葉の一片がどんなに大切だったかを今更思った。
有難うも、ごめんなさいも、大好きも大切な言葉で、
言われるのも言えるのも幸せな事だなのだと。

(俺はちゃんと幸せですよ、師匠。)

一体何処をほっつき歩いているか知れない人を想って夜空を見上げる。
それでも良い、命ある限りは希望もある。だから、生きている限り俺は屹度幸せだ。
そしていつか逝く日が来ても、屹度幸せに違いない。けれど昨日やその前やずっと前、
この手が無碍に奪った命を思う時、幸せな自分が少し悲しかった。

(だからと言って、斃さなければ俺が殺られるだけだし、もう食事をする時点で
 何かの命を奪っている訳だし…いつか光合成できるようになりたいな…。)

軽く開き直って帰りを急ぐ。そんな俺の背中を、青い月が溜息混じりに見守っていた。

 
 
34、春の風物詩


珍しく早い時間に目が覚めた、と言っても午前9時の事。
俺は台所に立つとトーストを焼き、フライパンに卵を落としながら地図を広げた。
ハーマスカに頼まれた品物をどの順番で集めるか検討する為である。

「うーん、万獣の要塞は中間地点になるから、北か南か…。」

程良く焼けたパンを更に乗せ、その上に卵を滑らせて、アッサムとニルギリをブレンドした
ブレークファーストティを淹れる。自作の朝食を摂っているうちに、やっと頭が働き始める。

「粉と調味料と水、ねぇ…。まあ、鮮度が落ちやすそうなのは水か。となると、北――」

まずテレポートで剣仙城に富んで、そこから物見遊山ついでに飛行で万獣の要塞、
樹下の都と巡り、またテレポートで帰る事に決めると、必要な物を準備して部屋を出た。
テレポートと言うのはとても便利だ。少々懐は痛むが、あっという間に目的地へ辿り着く。
俺は真っ直ぐに剣仙城の長老を尋ねると、
ハーマスカに持たされた土産物(饅頭)を差し出して小麦粉を分けてくれるよう頼んだ。

「ふむふむ、究極の饅頭か…それは協力せぬ訳には行くまい!」

白髭の好々爺は甘い物が好きなのか、土産の饅頭を機嫌良く頬張りながら、
件の品物を十分過ぎる量分けてくれる。思ったよりすんなりと用事が済み、
俺は拍子抜けしながら剣仙城を後にした。次の目的地は万獣の要塞だ。
翼を広げて川を渡る。雨がちらつく疾風平原を越える、このルートは初めてだ。
敵を引っ掛けないよう気を付けながら先を急ぐ。

(そろそろ休もうかな…)

小高い丘や小さな山が群立する地域を通りかかって一旦動きを止める。
慎重に高度を落とすと、辺りに気を配りながら地面に足を付けた。
先刻までの雨が嘘のように晴れ渡った昼下がりの丘でほっと一息つく。

(…あーあ、行きたくないなぁ……。)

本来なら少し手も急ぐべきなのだろう。けれど、なかなか足が進まない。
――万獣の要塞へ行くのが怖かった。決して妖族に偏見を持っているつもりはないし、
ヌサさんやたんたんと言った、素敵な妖族の友人もいる。けれどずっと子供の頃、
妖族の青年とちょっとした諍いを起こして惨敗した事があり、
どうにもあの屈強な種族には苦手意識が抜けない。トラウマの様なものだ。
勿論今では俺も立派な成人男子で、妖獣を恐れるほど可愛らしくはないが…。

「あ゛ー、もう!…行こう。」

子供の頃の、思い出したくない下らない記憶を振り払うように大きな声を上げる。
――それが、いけなかった。
ふと嫌な気配がして顔を上げれば、鋭い目つきのネザーウルフが俺に突進してくる!
山の陰になっていたのだろう、お互いに気づいていなかったようだ。
完全に、余計な音を出したが故の失態である。

(ちっ、これで何度目だ…っ!?)

旅を始めた時からもう何回も似たような目に遭っている気がする。
今まで無事だったのが不思議なくらいだ。己の不用意を悔みながら逃げの体勢に入る。
…勿論、間に合うはずがない。

「――っ!!」

いい加減自業自得に観念して身を竦めた。その一瞬が長い。
殺伐とした状況とは裏腹な心地良い風が雲を撫でて太陽を隠した。

――シュンッ、ドスンッ!!!

不意に傍らを一陣の風が駆け抜ける、黒い疾風。

真性パンツ戦士
頬を掠める黒コートのシルエットに思わず目を見張る――何故にパンツ!?
手甲に刃を付けた形の武器を華麗に捌き、電光石火の動きで俺をすり抜けた青年が、
瞬きする間もないくらいの短時間で目前の敵をなぎ倒したのである。

(――すごい…、色んな意味で。)

雲は流れ、また穏やかな陽光が注ぐ。穏やかさを取り戻した丘の若草を風が撫でた。
突如現れたコートにパンツの青年は、武器に滴る赤い露を払うとくるり、此方を振り返る。

「気をつけなきゃダメだよ、ホンちゃ…って、あれ?」
「え…?…っと…」

先刻の融資からは想像も出来ないほど穏やかな声色をした青年が首を傾げる。
寧ろ首を傾げたいのは俺の方だが、それよりも――

「…………服、着て下さい……………………。」

ぱっと見た感じ俺と同じか少し若いくらいの年齢か。
美しく整った体躯と、男の俺でも見蕩れるような美貌を持ち、
男前が三枚上がる黒コートを見事に着こなしているのにもかかわらず、
――なぜか下半身はパンツにブーツ…。
思わず先程入手したばかりの小麦粉を投げつけたくなったが、ぐっと耐えた。

「あ。…いあ、ゴメンね?」

いそいそとズボンを穿きながら照れたように笑うその人はどこをどう見ても善人で、
口調も雰囲気も酷く優しげな、何処かの貴公子の様な面立ちをしている。

(なのに何だ、この春の変態さんみたいな美青年は…。)

色々突っ込みたい所が多すぎて眩暈がする。
着衣を済ませた彼が大丈夫かと声をかけてくれなければ、
うっかり助けて貰った事まで忘れる所だった。

「いや、その…有難うございました……。」

気を取り直して頭を下げれば、相手は怒りもせずにどう致しましてと微笑む。
それから、此方が名乗るより早く向こうがその名を述べた。

「初めまして、Kyoです。えっと…もしかして、榧さん??」
「え?…あ、はい。そうです――でも、どうして…?」

熟練の戦士らしき青年は驚く俺を楽しそうに眺めて右手を差し出す。
戸惑いながらその手を取れば、Kyoさんは悪戯っ子の様な笑顔でネタ明かしを始めた。

「榧さんの事はホンちゃんに聞いてたから、そうかなぁって。
 それにさっき地図見てたら、ホンちゃんの印が光ってたけど、来てみたら違う人だったから。」

どうやらホンランの友人らしい…。
印と言われてはたと自分の荷物を見直し、持ってきた交流の箱が自分の物でない事に気付く。
どうやら昨夜、ホンランのものと取り違えて来たらしい。

「…間違えて来た…ホンランに怒られる……。」

やや蒼褪めてポソリと呟けば、目前の美青年戦士は爽やかに笑って、

「間違って良かったのでは?…じゃないと助けらんなかったし。
 ――ところで榧さん、こんな所で何をしていたので??」

言われてみればその通り。俺は再び相手へ礼を述べると、
今までの顛末を相手へと簡単に話して聞かせる事にした。
 
 

Comment

2009.05.01 Fri 23:47  |  きょさん

かっこいいな!
ぱんつだけど!!!!!1

  • #-
  • ホンラン
  • URL

2009.05.02 Sat 00:47  |  そろそろ

パンツに何も感じなくなってきました。

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2009.05.02 Sat 15:06  |  

パンツに。。。
何も言えませんΣ( ̄ロ ̄lll) 

  • #-
  • エンリケ
  • URL

2009.05.02 Sat 18:52  |  

Kyoさん、ちゃんと下を持っていたということは
なんらかの要因のもとで下を脱いだわけですね。
under the skyで。
友人への礼儀的なアレでしょうか^^b

なにより、上の三名のコメントに大笑いさせていただきましたww

  • #Ij9WZHRI
  • ツメレンゲ
  • URL
  • Edit

2009.05.02 Sat 20:17  |  

確かにかっこいいですが…!
パンツ…!(・∀・;)

もう…なんか
パンツの人結構慣れているので
いいんですけ…ど(´・ω・`)
久しぶりに見た気がします…(ΦдΦ;)

  • #-
  • リルカ
  • URL

2009.05.02 Sat 20:39  |  

・・・・(@´・ω・)
Kyoさん パンツで何してたんだろぅ

  • #-
  • Tur
  • URL

2009.05.02 Sat 22:43  |  

そろそろ動くと汗をかく季節だもんね^^??

かっこいいパンツーと、かわいいパンツー、うんうん(妄s
後は・・・おかんなパンツーとクールなパンツーを!!^^b

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.05.03 Sun 01:14  |  ちょwwww

あれ? あれれ?? (´・ωゞ)ゴシゴシ

ーーーーーーなぜにパンツ??Σ(゚Д゚)

ハンカチ王子の流行る3年前からリアルでバカ王子と呼ばれてた

きょです、ばぅああ。

ササで先にあやまっとくと言ってたのはコレかwwwww

・・・・・・・出演できたからいいや.+:。(*´ェ`*)゚.+:。

あ・・・・あとパンツは世界を救うよ?

  • #-
  • Kyo
  • URL

2009.05.04 Mon 21:46  |  

パンツ戦士は果たして残念なのか、おいしいのか……w
ちょっと判断しかねますけど、ご本人が満足ならよし(`・ω・´)b

――まあ春ですから、ね。うん(何w

  • #-
  • エス
  • URL

2009.05.10 Sun 22:37  |  いらっしゃいませ

ようこそ、駄文の世界へ…。
皆さん、パンツの話だと妙に喰い付きが良いですね。
はたしてこれはKyoさんの人気なのかパンツネタの力なのか…。
……前者である事を切に願っています………。

ホンちゃん
カッコいいな、上着てるのにパンツだけど!!!

タグさん
そうだよな、自分もパンツ戦士だもんな。

エンリ姐さん
えええ?!…なんか言ってあげてください><

レンゲ兄さん
青空の下で…(遠い目)
いや、どんな礼儀ですか、それ…www

リルカさん
そんな、乙女がパンツの人見慣れたりしないでください><ww

とぅるさん
…そこが最大の疑問です…俺にも理由は分かりません…。ww

れもんさん
暑いからって脱ぎすぎでは?!
ってか、暑いならまずコート脱ぎましょうよ!?
クールとおかんはパンツにならないのがクオリティです><

Kyoさん
立派に変態としての出演有難うございます^^
俺のKyoさんに対する正直な印象で書かせて頂きました!
パンツが世界救ったら嫌だなぁ…

エスさん
書いている側としては、大変ネタとして美味しいですが、折角の美形が残念でなりません。
そうそう、まぁ、いろいろ――春ですもんねwww

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