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36、袖触れ合うも多生の縁

標高が高いからと言って必ずしも涼しい訳ではないのか…。
砂に覆われた見張り台跡地には、じりじりと日が照りつけている。やけに太陽が近い。

「大丈夫かい、顔色がすぐれないようだな。」

晴れすぎた空を見上げる俺の前にさりげなく立ち位置を変え、
広い背中で日陰を作ってくれながらその戦士は言った。
つい先程出会ったばかりの色男、玲紋氏。
キャラパンを張って付近を拠点にしている村民に頼まれ、怨霊討伐の最中だったと言う。

「大丈夫です、何だか却ってご心配をお掛け致しました。」

このフェミニストな紳士はどうにも気遣う相手を間違っているような気がしないでもないが、
親切には礼を言って俺は1歩後退さった。

「…そこで何で逃げるかな?」
「…や、何となく…。」

彼を含めて知り合いの戦士が皆アレだからつい、条件反射で警戒してしまう。
玲紋さんはその美貌を苦笑で飾ると、先程教えた俺の名を交えながら、
肩を竦めるジェスチュアで溜息を零した。

「榧君…心配しなくても、脱がないよ?」
「……………。」

戦士なだけあってやや風変りではあるが、彼が善人なのは分かる。
俺は警戒をフェーズ3まで落とすと無言のまま頷いた。

「ああ、時間を取ってしまったな。何か用事の最中だったんだろう?」
「否、此方こそ…お仕事の邪魔をして済みません。」

その後、暫く立ち話をして戦士と別れた。彼は話題の多い気さくな人物で、
思いがけずも楽しいひと時を過ごす事が出来た。

「ねぇ、榧君。次に会ったら君の印を私にくれないか?」

別れ際、彼が言った言葉だ。いまではないのかと尋ねれば、
(と言ってもこの時俺は自分の箱を持っていなかった訳だが)
相手はウィンクで笑って

「次に会えたとき、と言うのが良いんだよ、ロマンチックだろう?…楽しみだな♪」

会えなかったらどうするんだと水を差してもその笑顔が曇ることはなく、

「絶対に会えるさ、信じていればね。…だから、榧君もそう思っていてくれよ?」

何の根拠もない自信を堂々と晒す。呆気に取られる俺の頭をくしゃり、とひと撫ですると、
彼は軽く手を挙げて戦場に戻って行く。逆光に霞む後ろ姿は眩しくて、
彼自身が太陽そのもののように思えて、俺はゆっくりと瞼を閉じた。
 
 


 
36、袖触れ合うも多生の縁

お日様の様な人と別れ、手近な村で一泊した俺は例の依頼を続けるべく、
風砂の丘を越えて一路樹下の都へ向かった。
何とか日暮前に目的地へと辿り着いて、その足で長老の元を目指す。
 
「恐れ入ります、長老。実は折り入ってお願いしたい事が…。」

持たされた手土産の饅頭を差し出し、これで3度目となる相談を持ちかければ、
長老は俺をちらりと見て、口では『私を太らせる気か?』と言いながらも
機嫌良さげにそれを受け取り、快く清泉水の在処を教えてくれた。
やはり、長老と言う役職の人々は甘味好きらしい…。

(こんな身近な所にあったんだ、知らなかった…。)

造船所の外れ、人の寄らない辺鄙な場所。
岩を割って澄んだ、甘い香りの雫が湧き立つ小さな泉がそこにあった。
煮沸消毒済みの瓶に水を組み上げ、しっかりと蓋を閉める。後はこれをハーマスカに届ければ、
一応は任務完了だ。俺は清泉水を大事に仕舞って、心も軽く樹下の都に戻った。
何がそんなにと聞かれるまでもなく、やっとこの巫山戯た仕事とオサラバ出来るのが嬉しい。
月が昇り始める頃、街の大通りへと足を踏み入れた。
当初の予定通りテレポートで祖龍に戻れば、今日中に終わらせることも可能なはずだ。

――ドンッ!

意気揚揚と道を歩いていた所に突然、衝撃を受けてよろめく。足を止めて顔を上げれば、
帽子を目深に被った男が小さく頭を下げてせせかましく立ち去る姿が映った。

「???」

確かに往来は多いが、人と肩をぶつけるほど狭い道ではない。
視界を悪くするまで帽子を被り込むのもどうかと不審に思いつつ男の背を見送る。
…あっ、と思ったのはその時だった。
顔を出し始めた月光の元、淡い金にストロベリーブロンズの混じった長い髪を輝かせた
華奢で美しい乙女が、その長い足を伸ばして男を転ばせたのである。
ぐらりとよろめいた帽子の男は地面に手を着くすれすれで体勢を立て直し、
怒りで顔を赤くして、口汚い言葉遣いで美女を罵った。
道行く人々はその光景から目を逸らし、素知らぬ顔で2人を避けて行く。

(…大丈夫だろうか…?)

放っておけなくて、俺は足早に喧噪の渦中を目指した。後数歩で割って入れる、と言う時。
帽子の男はとうとう手を上げた。固めた拳が女性に向かって振り下ろされる!
…止めるにも、残念ながら俺の手は届かない。

――パシン…

小さな音がした。――でもそれは女性が叩かれた音ではなくて…

「……。」

正義の味方

気配を微塵も感じさせず女性の背後に控えていた細身で長身の青年が、
いとも容易く無言のまま、片手で男の暴挙を留めた音だった。
帽子の男が何か雑言を投げつけ、掴まれた腕を振り解こうとしている。
しかし青年は微動だにせずやはり無言のまま、相手の腕をひょい、と捻り上げた。

「さくちゃん、もういいよ。」
「…そう?」

男が悲鳴と共に何か取り落としたのを拾って、女性が制止の言葉をかける。
青年は短く尋ね返してぱっと手を放した。解放された帽子の男は痣になった手首を摩りながら
覚えてろ、と悪役特有の決まり文句を残して走り去って行く。
悪漢の背中を『いーっ』と顰めた表情で見送って、女性はくるりと此方を振り向いた。
目が合えば、一連の顛末を呆気に取られて眺めていた俺へと歩み寄って来る。

「はい。…気をつけなきゃダメだよ?」

そして先ほどの男が取り落とした包みを俺に差し出した。

「え…?――あ。」

見覚えのある包みは昨日剣仙城で貰った小麦粉である。
思わず驚きの声を漏らしてそれを受け取ると、おは見知らぬ男女へ礼を述べた。

「…スリですね。」

長身の青年が聞こえないくらいの小声でポソッと呟く。
…改めて言われると無駄にショックなのは何故だろう…。
己の不覚を恥じながら、苦笑交じりに軽く肩を落とす。

「まぁ、大へんな事にならなくってよかったよね。」

と、今度は良く通る声で、慰める様に女性が言葉を足した。…本当に。
彼女らがいなければ今頃どうなっていた事か…。
もう一度この仕事を初めから、なんて洒落にならない。

「本当に有難うございます、何かお礼をしたいのですが…。」

通り掛かりの親切な2人組を見遣る。輝く長い金の髪に意志の強そうな鉄紺の瞳をした美女は、
耳元に3対の羽根を持つ所から俺と同じ精霊師なのだろう。
そして桧皮色の短い髪を後ろに流し、優しげな麹塵の瞳をもつ青年は、手元に買い物袋を…

(…………ええと……、買い物袋…………?)

…持ち物から職業は推測できないがどうやら人間族で、買い出し帰りのようだ。
パンツ姿じゃないから屹度、魔導師――だと思いたい。

「お礼なんかいらないよ、そんな事気にしないの!」

思わず青年から目を逸らす俺に、精霊師の美女が気風の良い言葉を掛けた。
ぱっと見た感じ受ける淑やかで高貴な印象とは裏腹に、中身は気さくな人物のようだ。

「ボクはらいあ。こっちはさくちゃん。…よろしくね、ええっと…」
「…桜雨……。」

朗らかな笑顔で名乗る美女と、愛称での紹介を密かに訂正する青年を交互に見遣り、
思わず笑みが零れる。

「お初に御目文字仕ります、俺は榧。見ての通りの精霊師です、以後よしなに…。」

どう見ても対称的だが仲睦まじい2人の姿に微笑ましさを感じながら、
俺は挨拶を返して深く頭を下げた…。
 
 

Comment

2009.06.03 Wed 23:08  |  

゚.+:。(´ω`*)゚.+:。ポッ
なんて素敵なんでしょう!
文章も絵も!
>小声でポソッ 
これさくちゃんにぴったり!そのまんま!
いやぁ、感動だお(つд`)出してくれて本当にありがとう!

これからも楽しみに読ませてもらいます♪
(PS:絵はもらっていってもよいのかしら・・?)

  • #-
  • らいあ
  • URL

2009.06.03 Wed 23:19  |  きたああああ

桜さん、きっと(´・ω・`)こういう顔で喋ってるんだ……。

  • #-
  • ホンラン
  • URL

2009.06.04 Thu 00:50  |  

登場させてくれてありがとー!

自分で言うのもなんだけどかっこよすぎないかい(´ρ`)
これからも読ませてもらいます(`・ω・´)

  • #8Y4d93Uo
  • URL
  • Edit

2009.06.04 Thu 02:07  |  

フェーズが3に下がって一安心www
次にまた出会える日を夢見とくよ~~~~ぅ( ≧∇≦)ノ

次々と完美の住人が登場してきて楽しいったらも~~♪
祖龍で見かけたらウキウキしちゃうったらも~~♪
らいあさんの可愛さにずきゅん(*/∇\*)
( ゚o゚)ハッ脱がない戦士さんて初じゃ?w

買い物袋を思わずアップにして見ちゃったとか(シーw

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.06.04 Thu 10:50  |  

それでもフェーズ3なのね(・∀・;)
せめて2に・・・ってあんまし変わらないか!w

文章と絵がとっても合ってて妄想が膨らみます(*´ェ`*)
続きが楽しみ~♪

  • #w4Ib0zSU
  • フィン
  • URL
  • Edit

2009.06.16 Tue 10:19  |  Σ(・ω・`|||)!!

なんと!!!! 美化300%じゃまいか!!

性格が・・・wwwww  さくちゃはあんな感じ

らいあは・・・・・・ジャイア・・・・・・ゴホゴホ

  • #-
  • Kyo
  • URL

2009.06.21 Sun 22:39  |  いらっしゃいませ!

ようこそ、駄文の世界へ…。

らいあさん
喜んでもらえたなら幸いです!
キャラクターを壊していないか何時もひやひや…ww
絵は煮るなり焼くなりお好きにどうぞ、とタグ画伯の許可をとってますよー^^

ホンちゃん
うん、きっと(´・ω・`)こういう顔だよねww

桜さん
ええと、かっこよすぎますか?桜さんカッコいいから良いと思います。
買い物袋ですけど、カッコいいですよ><b

れもんさん
買い物袋の芸こまかすぎですよねwww
いやあ、玲紋さんには今後もいろいろとやらかしてもらう予定(タグと同じ位)
なので、どうぞ宜しくお願いします!!

フィンさん
どんどん妄想しちゃってください><b
続きを楽しみにしていただけると、こちらも欠く意欲がわいてきます!

きょさん
何だか物騒な意見が聞こえた気がしたけれど、
空耳だと言う事にしておきますね^^^^^^

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