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38、Alles Gute zum Geburtstag!

西門の外れで立ち話に花を咲かせていた俺の名を、不意に誰かが呼んだ。
声に気付いて振り向けば、ビスカリの手招きする姿が見える。

「嗚呼、俺はそろそろ依頼に戻らなくては。
 お話の途中に申し訳ない限りですが、これで失礼させて頂きます。」

談笑を交わす幼馴染と泉の乙女に詫びの言葉を述べると別れを告げ、
俺は溜息をつきながら依頼主の元へと向かった。

「ごらんなさい、このツヤ!食欲をそそる芳香…
 これこそ、国をも揺るがすビスカリの傾国饅頭だ!」

此方が何かを言うより早く、女性が叫ぶ。
そして叫びながら出来たての饅頭を差し出す。相変わらず突拍子もない人だ。
受け取らない訳にも行かないので、仕方なく手を出した。

「これで世間を唸らす事ができるわ!協力、感謝する。
 またいつでも手伝いに来るがいい!!」

お・断・り・し・ま・す!!!
…と心の中で即答したが声には出せず、曖昧な笑みで誤魔化しながら報酬を受け取る。
貰ったのはまとまった額のコインで、まあ努力の分だけ実ったと言えなくもない。
とにもかくにもこれで面倒事からは解放されたのだ。
自分にご褒美をと新鮮な桃を買い求めた俺は、晴れやかな気分で宿へと戻った。
 
 
 
38、Alles Gute zum Geburtstag!
  
饅頭の一件から数日が過ぎ、
マイペースな日常を取り戻しつつあった俺の元に、一通の手紙が届いた。
右上がりの癖が強い男文字で、たった一言。

『Alles Gute zum Geburtstag.』

封筒を返して確認すれば、差出人はホンランの名になっている。
けれど、この字は…間違うはずもない。俺がこの字の主を分からない訳がないのだ。
何時書かれたものかは知れない。けれど紙もインクも然程擦れていないから、
近々書かれたものだと信じたい。

(――最高だ…!)

俺は顔が綻ぶのを止められないまま1人でガッツポーズを作り、
いそいそと交流の箱を取った。

「ホンラン!!!」
――あ?…どうしたの、榧?
「プレゼント有難う。」
――あ、ちゃんと届いた?…よかった。おめでとう、間に合…
「…で、いつどこで会った?」
――…………………い……あー、…何のコト…かな…?

一瞬の間をおいて、ホンランの素っ惚けた声が響く。数秒と言う名の、長い沈黙…
俺は大きく息を吸うと、声に満面の笑みを乗せて答えた。

「…ちょっと顔貸せ?」
――………………………………………ハイ………。

そんな訳で、目の前にホンランが座っている。
テーブルを挟んでその姿を眺めながら、俺はニコニコと笑顔を作った。

「…その嘘っぽい笑顔、コワイヨ、榧…。」

冷や汗をハンカチで拭ってホンランが言う。
失礼な台詞に引き攣る眉を何とか抑えて笑みを保つ。

「何が怖いのか知らないが、取って食う気はないよ、安心しろ。
 ただ素直に、贈物の礼を述べているだけだ。それでこうして食事を奢っているんだろう?」

ホンランの端を持つ手が困ったように止まる。食欲がないのか、なかなか動かない。

「遠慮するなよ、しっかり食べて色々、――吐いて貰わないといけないからな?」

語尾に力を込めて、俺は再び笑顔を作った。
ホンランはますます蒼褪めて、静かに箸を置いた。

「ねぇ、…榧、本気……?俺……ダメだよ、そんなの、幾ら相手が榧だからって…」
「俺じゃなければ、良いのかホンラン?――違うだろう?」

食事の後。祖龍の港の船着き場は、いつも人が少ない。
幼馴染を壁際に追い詰め、俺は長身の彼を下から睨め上げた。
ハードロープの胸元をぐっと掴む。山藍摺りが視線を逸らす。

「いや、だって…俺……」

プツン、とこめかみのあたりで音がした。

「だってもかっても明後日もない!!良いから口割れ!!!」
「いーやーだー、俺がこの世から抹消される!!!」

ブンブンと首を横に振って幼馴染が叫んだ。
メッセージカードの書き手についてである。
ホンランの字は小さめで、外見や性格に合っているのかいないのか、可愛らしい。
あんな癖の強い字を書くのは、あの人だけだ。
定住のリターンアドレスがない旅人は、郵便物を出す際、
必ず冒険者登録をしている名前を差出人として記載しなければならない。
そうでなくては届けて貰えない規定で、無記名で出す事など不可能だ。

(そこまでして俺に会いたくないのか、あんた!)

心の中で思わず罵倒の言葉を綴る。苛立ちを弓師にぶつけた所で変わらない。
俺は大きく溜息をつくと、掴んでいた相手の胸倉をぱっと放した。

「ふぅ…あのねぇ、榧?――独り言だけど、あの人無駄に元気だから。
 きっと、榧が追いかけて来るの、楽しみにしてるし見守ってるんだよ。独り言だけど。」

独り言である事をやたら強調して、解放されたホンランが呟く。

「………。」

独り言だそうだから、俺はその言葉を自分の胸に仕舞って、返事はしなかった。
膨れあがった俺を宥めようと思ったのだろう、ホンランに連れられて城南に向かう。
辿り着いたのは、金花婆婆の居る東屋であった。
弓師は年齢不詳の女性と何か交渉をすると、俺に向かって手招きをする。

「榧、うさぎさん抱っこしていいって。」
「え…本当か?!」

その台詞にぱっと顔を上げると、喜びを隠せないまま尋ね返す。
頷く2人に軽く頭を下げると、俺は安土をはねる小さなうさぎに歩み寄り、
そっと両腕を伸ばす。うさぎは少し首を傾げた後、ぴょこん、と俺の膝に乗って来た。

(うわぁ、可愛い……♡)

夕暮れまでうさぎと遊ぶ俺を黙って見守り続けた事に免じて、
俺はホンランを許してやることにした。何はともあれ、楽しい記念日になった訳だし…。

「そろそろ帰るよ。」
「嗚呼。…ではまたね、うさぎさん。」

月が昇る頃になって、やっと立ちあがる。
金花婆婆に礼を述べ、うさぎに再び挨拶をすると、俺は幼馴染と並んで歩きだした。

「悪くない一日だった。…礼を言ってやっても良い。」
「…はいはい。」

何となく視線を合わせられないままで呟く言葉に、ホンランが生暖かい笑みで答える。
そんな俺達を見守るように、空でキラリと、何かが光ったような気がした。
 
 

Comment

2009.07.09 Thu 13:53  |  管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • #

2009.07.10 Fri 18:30  |  

(/^◇)/お☆め☆で☆と☆う\(◇^\)ぉw
例の彼からですなー♪他に無いすなー♪w

榧さんとホンさんの漫才が最高に・・・(マテw
萌えなシーンが満載な一話ですなーー♪ウフフフフ

満面の笑みを乗せての「…ちょっと顔貸せ?」に∑(ノ゜⊿゜)ノハゥア!w
(ウサギに萌え萌えな榧さんにも萌えwww)

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.07.13 Mon 23:20  |  誕生日おめでとうでした~

そして手紙ゲットおめでとう(笑)本当の送り主の正体は、今後明らかになるのかな?
どこまでもえらそーなカヤが最高にらしいです。

  • #-
  • ホンラン
  • URL

2009.07.17 Fri 00:29  |  お誕生日おめでとう!!

いくつになったかは・・・あえて聞かないでおこう(笑)

うさぎまみれになりつつ、いつかあの人に会えるといいね!

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2009.07.26 Sun 01:35  |  


ぉめ゚+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚で㌧

うさぎに癒されるカヤさんに会いたい思ったTurでした。

  • #-
  • Tur
  • URL

2009.07.28 Tue 17:26  |  コメント遅れてすみません

いらっしゃいませ、ようこそ駄文の世界へ…

鍵様
有難うございます^^
ばれてしまいましたか…今後も宜しくお願いします。

れもんさん
お祝いの言葉、有難うございます^^
ホンランとの漫才って、どの辺が漫才ですか?!
そしてどれが萌えシーンだったのかを詳しくお聞きしたいですww
体育館裏呼び出しモード榧、いかがでしたか?
うさぎは…うさぎだから仕方ないんです!あれは芸術的な生物ですよ!?

ホンちゃん
うん、ありがとよ。今度レアチーズケーキにフランボワーズソースかかった奴作って。
今後手紙の差し出し主については、小出しにしていく…予定。
いや、あのひと大っぴらに書けないよね…ww
偉そうじゃない、偉いんだよ。

タグさん
ありがとう、そこは聞かないで。www
あのひとなぁ…ねぇ、出していいと思う?(人に聞くな)

とぅるさん
ありがとうございます^^
うさぎのあの耳と言い、丸っこさと言い、尻尾と言い、しぐさと言い…
もう、芸術の域ですよ!世界の神秘です!!
今度ぜひ一緒にウサギと戯れましょう><b

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