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39、作戦A~ver.HongLang~

…危なかった。
ウサギと戯れる榧の背中を眺めながら、俺は心の中でそう呟いた。

あ、どうも初めまして。知り合いの方はこんにちは。
俺の名前はホンラン。エルフ族の旅人として世界を巡っている者です。職業は弓師…
って言いたいところですが、幼馴染のお目付け役兼胃袋管理人と言うのが正しいかも。

「…何ブツブツと独り言を言っているんだ?」

そして向こうからその美貌に怪訝な表情を浮かべて声をかけて来るのが、幼馴染の榧。
俺と同じくエルフ族で、外見だけで人をだませる眉目秀麗な精霊師…
とは名ばかりの、羽根のついた魔導師だと、勝手に認識している。

「うん?…別に何でもないよ。それより、そろそろ帰ろうよ、榧。ウサギも遊び疲れてるよ?」
「……嗚呼、了解。」

さて、何で今俺がここ、城南の金華婆々の所にいるかと言うと、話は今朝に遡る。
ある人物(と言うかもう、この人が何もかもの原因なのだが)
に頼まれて代理で贈った品物が、榧の手元に届いたのである。
それは榧にとってこの世界で誰よりも大切で逢いたくて、誰よりも憎い相手からの贈物だ。
その人物は自分の居所を榧に悟らせたくなくて、
敢えて俺からの贈り物として荷物を出すよう指示してきたのだが、
恐らく同封したメッセージカードの筆跡で榧には本当の送り主が分かったのだろう。

(ホント、困った人たちだよ…)

こうしてウサギと遊んでいる姿だけは邪気のない幼馴染の背中をただ眺め遣る。
俺が榧と出会ったのは、もう随分昔の事だ。行商人だった父親が得意先としていた村に、
彼らはやってきたのである。出会ったころの榧は女の子のように愛らしく、
丸くてちっこくて身長なんか俺の腰くらいまでしかなくて、舌っ足らずの口達者で、
もー、ホントとにかく可愛かったものだ、性格以外
榧には二親がいない。何かの事故で失って、件の人物に拾われたらしい。
長い黒髪の魔導師で、男の俺から見てもハッとする様な色男だった。
当時から、榧の世界観は非常に狭く偏っており、かつ深い。
内側に向かって底なく潜って行く類の性質だ。
その内側の中心に、彼がいる。育ての親であり師匠でもある彼が、贈物の主なのである。
またこの人が妙に人好きするというか、不思議な魅力を持った人物で、
俺にとっては良い友人なのだが、人を使うのが上手い上に人使いが荒いくて今に至る。

(もー、いい加減答え出して、子守くらい自分でしてほしいよ…)

まぁ、俺はそんな友人もこの幼馴染も気に入っているから別にいいのだけれど、
件の彼と定期的に連絡を取っている事が榧にいつバレるかと思うと気が気じゃない。

「悪くない一日だった。…礼を言ってやっても良い。」

帰り道。回想に浸っていた俺と並んだ榧が、偉そうに言った。
長い睫毛を伏せぎみにして、視線を合わせずぽつりと、ぶっきらぼうに呟く。

「…はいはい。」

思わず、笑みが漏れた。この幼馴染は素直じゃない。今の台詞を直訳すると、こうだ。

『今日は良い一日になった、有難う。』

何がこうも彼を捻じ曲げたのか知らないが、面白い事この上ない。
榧が俺に対して偉そうなのも、信用して甘えて貰えていると思えば許せる気がする。
かの魔導師も、こんな俺を信頼してくれているのだろうか。
それなら、もうしばらく子守を引き受けても良いと思える。

「夕飯はトマトシチューが良い。」
「?……それは俺に作れ、と?」
「当然だ。」

…………やっぱり、早く帰って来て下さい………。

 
 
39、作戦A~ver.HongLang~
 
三国一のお人好しな俺は、結局榧に乞われるまま夕飯にトマトシチューを作り、
サラダとデザートまで食べさせてやってから宿へと送り返した。
明日は何やら狩りを手伝ってほしいと言うので、10時に待ち合わせとなった。

(ホント、自分で言うのもなんだけど面倒見良いよな、俺…)

そんな訳で翌日。約束の場所で幼馴染を待ちながら溜息混じりに心の中で呟く。
約束時間ギリギリの所で、まだ目覚めきれていないと言った風体の榧が
此方に向かって来る姿が見えた。

「お早う、ホンラン。」
「遅よう、榧。」

ちっとも早くない。掛けられる挨拶を苦笑で返して、狩場へと向かう。
どうやら討伐依頼を受けてるらしく、白虎林道にいるデーモンアーチャを退治したいらしい。
榧いわく『敵の弓師は最悪』だそうで、斃すのに苦労する事を散々主張された。
敵とは言え、同じ弓を持つ者同士…
あまり悪く言われると自分が責められているようで忍びない。

「あいつらだって頑張ってるんだよ!」
「生きてる以上は当然だ。だが、…敵として対峙するには、あまり頑張ってくれなくて良い。」

ご尤もな意見で一蹴され、渋々弓を番える。
敵に向かって鏃の先を定め、頬を撫でる風の強さに弦を引く力加減を尋ねる。

――スパァンッ!

風を切って飛ぶ弓の嘶きが好きだった。
弦を引く一瞬の集中が好きだった。
血なまぐさい戦場、と榧は言う。でも、それを考えていたら俺達は生きていけない。
互いに明日を掴み取る為、争わなければならないのであれば、
精一杯は鏃の先に宿し、感傷は胸の奥に密めて弦を引くのが俺の成すべきことだ。
…そして掴み取るべきは俺の明日。敵には悪いが…戦いに感傷は無意味だ。

――ドス…

敵がもんどりうって倒れた。もう随分蹴散らしたように思う。
気付けば、相手の矢が掠ったのか、頬に血が滲んでいた。

「榧、そろそろ少し休憩…」

俺は集中を解くと、近くにいるはずの幼馴染へと声をかける。…が、返事はない。
ハッとして辺りを見回す、まさかやられてしまったのでは…!
戦いに集中して周りを見ていなかった自分を呪った。

「カヤッ!!!」

慌てて周囲に目を配る。が、やはり姿は見えない。背中に冷たい汗が伝う。

(一体何処に…)

ふと、踵を返した瞬間だった。ギリギリ、と弓を引く敵の姿が視界に映ったのは。
友人の姿を探す事に気を取られ、怨霊に囲まれたと気付かなかったのだ。
既に弦を一杯まで引いたデーモンアーチャが不気味な笑いを浮かべている。
鏃は真っ直ぐに俺の左胸を狙っている。

(まずい!)

相手が1匹だったならまだしも、2匹の敵が此方に矢を向ける。
慌てて弓を構えても、間に合うはずがない。
俺は自らの身を守るべく、フェザーシールドの真言を呟いた。

「伏せろ、ホンラン!――Der Pfeil der Feder!」

敵が矢を放とうとする寸前。それこそ矢のように伸びるテノールボイスが鋭く響く。
ハッとして、振り返った。――榧だ。
彼は何かを詠唱すると、光の宿った腕を前方に振る仕草で術を発動させた。
鋭い羽根が光の筋を描きながら、2匹の敵に降り注ぐ。

「片方任せた。」

デーモンアーチャ2匹の敵意を一身に引き受けた榧は、自分に回復術を降らせながら
うち片方を自らの獲物として捉える。俺はすぐに頷くと、弓を引いてもう片方に矢を打った。
何とか敵を退けた俺は、援助してくれた幼馴染に礼を述べると、大きく溜息をついた。

「どこ行ってたんだよ、心配したじゃないか。」
「…驚いたのはこっちだ、ホンラン。君が失態なんて、らしくない。」

榧を探してたからだ、とは流石に言えず苦笑する。
見れば幼馴染は俺以上に満身創痍で、あちらこちらに傷を負っている。

「精霊師が何でそんな傷だらけになってんの?」
「作戦Aだから。」

自分で回復するとか、仲間を回復するのが精霊師じゃないのかと問い正せば、
榧はそれが当然の答えだと言わんばかりにそう答えた。

「は?…ナニソレ?」
「作戦Aは、回復をしない戦い方の事だ。」

(ハイ?…なんですと??――榧さん、精霊さんですよね?)

「…2人バラけて狩りした方が効率良いだろう。」
「………ええと、じゃあ回復ばっかりするのはB?」
「違う、それは作戦C。」

と言うか、はじめて聞いた、そんな作戦とか。

「え?じゃあ、Bは??順番じゃないの?」

訳も分からず首を傾げて尋ねる俺に、榧はややお怒り気味で早口に答える。

「違う。作戦Aは俺も攻撃専門になるからAttackのA、
 作戦Bは、攻撃・回復織り交ぜるからBasicのB、回復専門は作戦Cで、Cureの意味だ。」

言われてみれば納得できない事もないので、俺は感心して頷いた。
榧は物知りなので、何か書物でも見たのかもしれない。

「へぇ。…そんなのどこか、冒険者証とか軍書に載ってたっけ?」
「ない。…今俺が作った。」
「――は?」

…………………………………………………………。
こんな時、何を言ったらいいか知っている人がいたら教えて欲しいと思う。
幾ら俺が榧の保護者だとして、当たり前のように主張されても、
そんな今頭の中で考えた法則なんか理解するのは無理である。

「……次から先に言ってね…」

眩暈のする頭を右手で軽く抑えると、
俺は何とかそれだけの台詞を絞り出すのが精一杯だった…。
 
 

Comment

2009.07.21 Tue 20:47  |  

作戦A誕生の瞬間ですねwwww
ちなみに、自分は羽男として生まれたその日から
作戦Y(休み休み)を貫いてます^^w

カヤさんは本当に自由な末っ子体質だなあ!ww
ホンランさんとカヤさんは年の近い幼馴染のような雰囲気ですが、
初めて会ったときはそんなに小さかったんですね。
実は二周りくらいホンランさんのほうが年上なんでしょうか^^
徐々に明かされて行くお二人の過去が大変気になります。
次の更新も楽しみにしておりますね^^ノシ

  • #Ij9WZHRI
  • ツメレンゲ
  • URL
  • Edit

2009.07.23 Thu 11:33  |  

精霊も攻撃したくなりますよねー(`・ω・´)
きっとカヤさんは作戦Aでチャットする余裕がなかったんだよね!w
私は欲張りで回復も攻撃もしたいから常に作戦Bです(*´ェ`*)

  • #w4Ib0zSU
  • フィン
  • URL
  • Edit

2009.07.23 Thu 22:55  |  ほろり…

思いがけずホンランの一人称は新鮮でいいねえ^^
相変わらずおかんだけどね……!!!

  • #-
  • ホンラン
  • URL

2009.07.25 Sat 04:18  |  

作戦Dを提案します

ホンちゃんソロでそれ以外は暖かく見守る!

逝ったら指をさして笑う上にホンちゃんモヒ・・・・

最近会えなくてさみしぃじぇ(´・ω・`)

  • #-
  • Kyo
  • URL

2009.07.28 Tue 17:35  |  いらっしゃいませ

ようこそ、駄文の世界へ…

兄さん
作戦Yとかあったんだ…流石にそこまでは作ってなかった。
(ちなみに今のところFまであります)
末っ子気質…いや、榧さんは一人っ子ですww
そして中の人は4人兄弟の2番目と言う可哀想な立ち位置です。ww
ホンランと榧は1歳違いの幼馴染なんですが、諸事情により榧は成長が遅かったのですよ。
その辺りはいずれ物語で明かす…かもしれません。
ちなみに、ホンランが言うほど榧は小さくなかったんです。
ただ、ホンランがそう思ってるだけで!!!
ちなみに中の人の事も、ホンちゃんの中の人はポケットにはいるくらいの大きさだと思っていやがります。
まぁ、そんなかんじの感覚です…ww

フィンさん
攻撃したくなりますよね><だってちゃんと攻撃技持ってるんだから!
チャットはする余裕がなかったのではなく、する気がなかったんです。
榧は自分が状況を掴めていれば、他人に伝える必要がないと思っているのでww
作戦Bは何気に技術を求められるので実行できるのは凄いと思います><b

ホンちゃん
だってオカンだもん。
ホンラン一人称は、書くのも楽しかったよ。たまにはいいね、こう言うの。
今度はまた誰かのキャラを借りて別の人で書いてみようか。

きょさん
作戦Dは既にあるんですよ。でも、内容はそんなんじゃない。www
ちなみにそのホンラン法治な作戦は、作戦Fです。ww
この頃色々立て込んでてIN率減ってますが、生きているのでまた構ってくださいませ^^

  • #-
  • URL

2009.08.05 Wed 13:42  |  

ホンさんの「次から先に言ってね」にうんうんと激しく頷いた私www

誰しも自分なりの定義があるもんだけど、榧さんのは簡潔で素敵♪

私の作戦は・・・・・作戦Dかもしれない(ボソw

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.08.07 Fri 12:33  |  いらっしゃいませ

ようこそ、駄文の世界へ…

れもんさん
何故そこに同意する!?
なんだか褒められた気がしないのはどうしてでしょう…?
れもんさんの作戦D、どんなだろう??

  • #-
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