スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

41、激戦!

敵を求めて彷徨う百虎を前に、
放っておいたら突っ込んで行きそうなくらい血気盛んな兄弟を眺める。
背後から2人の首根っこを掴んで引き止めると、俺は大きな溜息を零して見せた。

「何か勝算は?」

はたと動きを止めた兄弟は此方を振り返り、

「当たって砕ける!」・「何とかなるだろう?」

台詞は違うが声を揃え、同じ意味の言葉で偉そうに答える。
軽い苛立ちを覚えて固めた拳を辛うじて押し留め、
俺はもう何度目にもなる盛大な溜息をまた漏らした。

「少しは気の利いた事を言って見てはどうです、その頭はただの飾りですか?
 もしくは内部をつるっつるに研磨済み?
 …無鉄砲大いに結構、好きなだけ玉砕したらいい、
 けれど最低限、保護の術くらいは施しておいても良いでしょう?」

呆れながらも矢継ぎ早に申し立てれば彼等は顔を見合わせて、
片や感心した風に、片や不服げに頷いている。
言いたい事は他にも沢山あるが、ここはもうひたすら耐えて加護の詠唱を行う。
それぞれが持ち得る限りの守護を与え合ったところで、今度こそやっと百虎に向き直った。
 
 
41、激戦!

不本意ながら、作戦Cだ。
他人の援護に訪れているのだから当然と言えばそれまでなのだが…。
ここで味方を傷付けられては流石に精霊師の名が廃る。
と言っても廃るほど立派な精霊師でもない俺は、
味方の状況を把握するのに精一杯の有様だ。
今敵がどれくらい弱っているのか、回復の他に出来ることはないのか…
などと考える余裕はない。

「っ!」

攻撃の矢面に立つTaglissが、時折痛みに声を殺すのが分かる。
そのたび何だか申し訳ない気分になりながら、ひたすら回復術の詠唱を続けた。

「く…っ!」

そうして前衛だけに気を取られていると、今度は後衛のValiが攻撃を受けて小さく唸る。
右にも左にも気を抜けない状況はもう、辛いを通り越して痛快ですらある。
この奇妙な高揚を、人は闘争心と呼ぶのだろう。

(嗚呼、嫌だな、まるで被虐嗜好……)

Valiの傷にヒーリングを施しながら、うんざりと心の中で呟く。
それからTaglissの様子を窺い、やはり回復の詠唱を続けながら思った。

(まあ、彼は間違いなく被虐嗜好者だろうけど。)

そんな風に見られている事など知る余地もない少年戦士は
百虎の猛攻を必死に防いでいる。
相手の敵愾心を奪われぬよう、彼自身もまた、攻撃の手を緩めない。

「あと少しだ、気を抜くなよ!」
「うん!」

鼓舞するような魔導師の台詞で、俺は敵がかなり弱って来ている事を知った。
Taglissも手にした槍を奮って勢い付く。

「うりゃ!」

戦士が大きく武器を振り上げた!
先の戦況を予測して、すかさず回復術を降らせる。…不意に、百虎と目が合った。
不気味に光る、狂気染みた目…ガスッ!とその時、槍が地面に刺さった。
珍しく、Taglissの攻撃が避けられたのだ。
そんなところへ運悪く俺の回復術が届いたものだから、
手負いの敵はそれまでの恨みを全て此方に向けて走って来る!

「ちっ!」

背後でやや神経質そうな、短い舌打ちが聞こえた。が、気にしている余裕はない。
ある程度の痛みには覚悟を決めて、自分の為に詠唱を始める。

(持ち堪えてくれよ、俺の体…!)

大きく振り上げられた敵の爪――
頭上から降る陰に少し身を強張らせつつも、詠唱は止めない。
百虎の背中側から、Taglissの慌てたような足音が聞こえる。
俺の背後からは、低く甘く唱えられる魔導術の真言…。
厳かなそれは歌声に似て、酷く耳に心地良い。
人は危機に陥ると、関係のない事を考え始める物なのか、
俺の脳裏には戦いと無縁の感想だけが湧いて出る。
何処か神経質さを感じさせる尖った声と、
深い響きの低い声がまるで多重録音のように聴こえた。

(…分からないけれど…Valiの声って、こんなだったかな…?)

身体の芯に直接触れて来る質の音に軽く首を傾げながら、魔導師の詠唱に自分の声を併せる。
ヒーリングの術が完成するまで僅か数秒の事だったが、
不思議と何だか懐かしい様な、戦いの最中なのに酷く幸せな気分になる。

「――!」

幸福な長い一瞬を経て迫りくる鋭い攻撃は、そうして俺の鎧を削った…かのように思われた。
――が、ゴォッ、と凄まじい音を立てて飛来した炎の鳥によって、
百虎は遠く吹き飛び、水蒸気と化して霧散した。
驚きに目を瞠れば、吹き飛んだ百虎を避けて振り向き、
敵が消え朽ちるまでの顛末を目の当たりにした少年戦士も呆然と立ち尽くしている。

「…すっ……ご………」

単語にすらならない感嘆の呟きを洩らして、Taglissはくるりと兄を振り返った。

「お兄ちゃん、すごいっ!!!」

そして頭の悪い大型犬宜しく魔導師に駆け寄ると、その兄と体格差は然程なく、
寧ろ戦士な分だけ己の方が逞しいと言うのにも気付かぬ様子で飛びかかる!

「うわっ!?」

短い悲鳴を上げてValiは一歩後退りつつよろめいた。
しかしまぁ、魔導師の細身であの大型犬を受け止めただけ天晴れと言えよう。

「いや、でも本当に…凄いですね、助けられました。見事な火炎術だ。」

何が“でも”なのかと問いたげな視線は華麗にスルーして、素直に魔導師を褒め称える。

「え?…炎……、いや、オレは…」

と、讃辞を受けた彼は怪訝な表情で口篭ったが、

「見てー!榧さん、コレおっきな剣だよー!」

パッと兄魔導師から離れたかと思いきや、
その辺りの遺跡で遊び始める弟戦士の声に台詞を止めた。

「……重要文化財かもしれない遺跡に登るなよ……」

同じく声に呼ばれた俺もはしゃぐTaglissに歩み寄り、
Valiが何を言い掛けたのか尋ね返す事をしないままで、まずは子供さながらの友人を諭す。

「えー…見晴らし良いよ?――お兄ちゃんもおいでよー!」

しかし少年戦士は人の忠を無視して尚もはしゃぎ続けた。
こちらの様子に呆れたような溜息を零し、
けれどとても優しい笑顔一瞬見せて兄魔導師が近付いて来る。

「いい加減降りろ!」
「榧さんって時々ホンさんみたいだよね。」
「俺はあんなオカンじゃないぞ?」

彼

雑言の応酬に勤しんでいた俺は、
だからしきりに背後を気にする様子のValiがそこに何を見たのか……
――気付く事は出来なかった。

 

Comment

2009.08.31 Mon 15:10  |  

ちょーーーー!!!Σ( ̄□ ̄ノ)ノ
虎空かっこ良すぎるわーーー!!(*ノェノ)満足げな微笑みも♪
実はこんなにすぐ傍に居たなんて・・・・
後で榧さんが知ったらどんな顔するのかしらん?ウフフフ

  • #dS5vVngc
  • れもん
  • URL
  • Edit

2009.09.01 Tue 13:59  |  うひょw

ホンちゃんは回復してあげないのにwww

しかしアレだね パンツ戦士と扱いががががが_| ̄|○

クールな2枚目・・・・・・3秒持ちません(ノ∀`)

  • #-
  • Kyo
  • URL

2009.10.26 Mon 21:51  |  大変ご無沙汰です;

ようこそ、駄文の世界へ…

れもんさん
師匠がカッコイイのはいつもです!
後で知ったら…そりゃ悔しがるでしょうねwww

Kyoさん
師匠以外の扱いは割とヒドイと評判ですwww

  • #-
  • URL
(編集・削除用)
管理者にだけ表示を許可

Trackback

URL
http://kaya0629.blog25.fc2.com/tb.php/201-9b1e66db
この記事にトラックバック(FC2Blog User)

プロフィール

榧

Author:榧
Server:ベテルギウス
Job:精霊師
Guild:BLOOM
Character:うさぎ至上主義。

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

いらっしゃいませ。

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
Copyright © 榧
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。