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43、オトナの事情~ver.HongLang~

なんだろう、なんだか少し心配だ……。
恐らくどこまでも社交的なだけなのだろうが、
どうにも手の早そうな印象を受ける赤い軍服姿の戦士に荷物を持ってもらい、
何やら雑談を交わしながら連れ立って去る幼馴染の背中を見送る。

あ、どうも初めまして。知り合いの方はこんにちは。
俺はエルフ族の旅人として世界を巡っている者で、職業は弓師……と言いたいところですが、
幼馴染のお目付け役兼胃袋管理人の方が、世間的には通用します。ホンランです。どうも。

「どうせあの様子じゃ、ろくに食事の用意もしてないんだろうし……」

恐らくこんな事を言う俺にも問題があるとは思うんだが。
去って行った幼馴染というのは、俺と同じくエルフ族で、
外見だけで人をだませる眉目秀麗な精霊師……とは名ばかりの、
羽根のついた魔導師と言っても過言ではない戦闘精霊、榧である。
俺が榧と出会ったのは、もう随分昔の事だ。
父の仕事について訪れた村に住んでいた、彼とその保護者が、
そのうち俺の村に越してきてすっかり仲良くなり、
気が付いたら幼馴染として長い時間を過ごしていたのである。
出会ったころの榧は女の子のように愛らしく、
丸くてちっこくて身長なんか俺の腰くらいまでしかなくて、舌っ足らずの口達者で、
もー、ホントとにかく可愛かったのに、どうしておっきくなっちゃったんだ……。

(榧がひもじい思いをしたら、俺があの人に怒られるからな……これは過保護じゃないぞ、うん!)

榧も今となっては立派(?)な冒険者である。
俺の手助けがなくてもちゃんとやっていけるとは思うが、
榧を置いて一足先に旅立った榧の師匠から世話を頼まれているから、
どうしてもほっておけなくて今に至る。

(よし、様子を見に行こう)

俺はいろいろと自分に言い訳をして、榧の活動拠点である城南の宿を目指した。


43、オトナの事情~ver.HongLang~

(……え……?)

途中の市場で簡単に食材の調達をしてから榧の宿を訪れ、
扉をノックしようとして思わず動きを止めた。
なぜなら、室内から何とも不穏……というか、妙な会話が聞こえてきたからである。

「あっ……ぅ、痛っ……」

ガタン、と家具の揺れるような音に交じって、少し苦しげに掠れた、吐息交じりの澄んだテノール。
聞き間違うことはない。これは榧の声だ。

「おや?……もう根を上げるのかな?
……君はこう言う遊びに慣れていそうだと思ったんだが?」

ふっ、と挑発するような笑み声が続く。
やや鼻にかかったようなその甘い声は、先ほど榧と並んで去った赤い軍服の戦士だろう。

(……?……この部屋でいったい何が……)

扉をノックするのもなんとなく憚られて、俺はその場に立ち尽くした。
そんな事とはしせらない様子で、室内の妖しげな会話は続く。

「別に、慣れてない……わけじゃ……。
でも、もう少し、……手加減して、下さっても……くっ……」

これは榧の言葉。少し苦しげに声をつまらせ、何か力むような息遣いが混じっている。

「これでも、手加減しているつもり……ぉ……っ」

ミシ、っと何か木材の軋むような音に交じって、衣擦れの音。
続いて、それまで余裕の声音だった戦士……玲紋さんの驚いたような短い吐息。

「なかなか、……頑張るな、榧君……ここは私も、本気を出すとしようか……」

これまでは榧をあしらうようだった玲紋さんの声に、真剣味が生じた。

――しゅるり、バサッ……

ネクタイを解くような布音と、上着が床に落ちる音が聞こえる。

(え、なに、ちょ……)

まさか。
いや、そんなまさか。
だって、ねぇ?……ほら、うん。なんだ。
そりゃ榧は見た目だけで人をだませそうなくらいの美形ですよ?
だけど、あいつもれっきとしたオトコノコであって、その……。
いやいや、でもなぁ……。
さっき挨拶した時の様子から見て、玲紋さんってあんまりこう、なんだ。
相手が男性とか女性とか気にしなそうだし。
これって、もしかしてなんだかこう、オトナの事情な感じでは……?
中で何が起こっているのか、声だけで判断するしかない俺の脳裏をコワイ考えが過る。

「え、あ……っ、待って、下さい!……そんな、いくらなんでも……っ、……ああっ!」

まるでダメ押しのように、室内から榧の切羽詰まった悲鳴が聞こえた。
ガタン、とひときわ大きな軋み音がする。
さー、と全身の血の気が引いた。
いやいや、レンアイは個人の自由ですよ?そりゃ分ってます。
趣味嗜好だって、個人の自由ですし、うん。
でも、でもこれはこれは、保護者として見過ごすわけにはいかないだろう。
うちの子に限ってそんな……!

――バターンッ!

俺は意を決して思いっきりドアを開けた。

「そこの二人!……早まるんじゃなーいっ!」

固く目をつむり、力一杯声を張り上げる。
それから、恐る恐る目を開いた。……そこには……

「は……?」・「んん?」

互いに軍服の上着を床に脱ぎ捨て、ネクタイを緩めてシャツのボタンをひとつふたつ外し、
右手をがっしり握り合って額を突き合わせる榧と玲紋さんの姿が……。

「早まる、とは?」

何の事だかわからない、と言いたげな玲紋さんが不思議そうに首を傾げる。

「え、あの……、なんていうか、え?」

テーブルを挟んで向き合い、袖捲りで互いに腕をからめる二人。
玲紋さんは指先を赤く染めているだけでまだどこかに余裕を残しているが、
榧に至っては顔を紅潮させ、肩で息をしている。

「良い所に来た、ホンラン!」

いきなり空いた扉を怪訝な顔で見ていた榧だったが、
突然の侵入者が俺である事に気付くや否や、玲紋さんの腕を振りほどいて立ち上がった。
小走りに俺へと駆け寄ってくる。

「あの、榧……ええと、今……何してたの?」
「何って?……見ての通り、腕相撲だ」

榧は力の入れすぎで血管の浮き上がった白い両腕を俺にさらしながら、
当たり前のことを聞くなと言いたげに首を傾げた。

「え、ああ、そう……、そうだよな、うん。そうだと思ってたんだ、あはははははは……」

榧は『そうだよ』とまた当たり前のように言って、怪訝な表情で俺を見上げる。
色々と心配していた俺は、その様子に気が抜けて乾いた笑いを零した。

「ふぅん……そうか、そう言うことか……」

腕相撲の体勢でテーブルに肘をついたままだった玲紋さんは、
それまで握っていた榧の手の代わりに自分の顎をそこに乗せ、頬杖をして俺を流し見ている。
口元に、少し意地の悪い笑みを浮かべながら。

(あいたたたたた……)

何か言いたげな玲紋さんから視線を逸らし、俺は内心溜息をついた。
とんだ勘違いをしたものだ。いや、どんな勘違いかはいいませんけどね!

「玲紋さん、今度はこのホンランが相手です!……行け、ホンラン!」

俺と玲紋さんの間に流れる奇妙な空気を全く読む気のない榧は、
いまだ動揺から立ち直れない俺の腕をグイッと引っ張って無理やり席に座らせる。

「え?……行けって、そんな人を鉄人ナントカみたいに……」

そもそも、なんで榧はこんな屈強な戦士の玲紋さんに腕相撲なんか挑んだりするんだ。
この子ホントに精霊ですか。

「いいじゃないか、ホンラン君。
……君が勝ったら、いまの考えは口にしないでおくが、どうかな?」

色々と思う所はあったが、どうやらこちらの勘違いに気付いているのか、
にまにまと意地悪な笑みを浮かべる玲紋さんの台詞に断る場を失った俺は、
よりによって戦士の玲紋さんと腕相撲をする羽目になったのである。

Comment

2012.02.19 Sun 03:34  |  

新作きてたヽ(゚∀゚)ノ パッ☆

榧さん元気かな?

  • #-
  • Kyo
  • URL

2012.02.19 Sun 16:10  |  生きてますよー!

ようこそ、駄文の世界へ……

Kyoさん
元気ですよ、有難うございます!
きょさんこそ、寒さで風邪ひいてませんか?
春まで間もなくですから、元気に過ごしてくださいね?

  • #-
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まとめ【43、オトナの事情〜】

なんだろう、なんだか少し心配だ……。恐らくどこまでも社交的なだけなのだろうが、どうにも手の早そうな

  • まっとめBLOG速報
  • 2012.11.20 18:51

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