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12、老人と羽

水面に夕日が反射し、辺りをオレンジ色に輝かせている。
だが、こんなにもキラキラして眩しいのは決してその為だけではない。
柔らかな草の上に腰かけて微笑む二人の乙女。
景色を華やかに見せるのは彼女達の存在そのものだろう。
仲睦まじい二人は実の姉妹だそうで、普段は別々に旅をしているのだが、
時折こうして顔を合わせては共に時を過ごすのだと言う。

「素敵ですね。」

長女がとぅる嬢、ラム嬢は三女で、間にもう一人姫君がいるらしい。
そして末には弟君がおり、連絡はマメに取り合っているのだそうだ。
楽しげに家族の話をする二人を羨ましく思う。けれど嫌な気分ではなくて、
こちらまで温かな気持ちになるのは屹度、そこに愛が溢れているからだ。

「榧さんは兄弟いないの?」

ふと思いついたようにラム嬢が呟く。逡巡の後に俺は答えた。
ここで俺の家族の事なんて話すのは野暮だ。

「兄弟はいませんが、幼馴染はいます。」

血族の縁は薄いが、その分多くの愛情に包まれて育った己を想う。
今までずっと幸せに生きてきたし、これから先もきっと俺は幸せだろう。

「いいねー、すっごくイイ笑顔!」

気付かない内にほほ笑んでいたらしい俺を、
下から覗き込むように見上げてとぅる嬢が笑った。
花の蕾がぱっと開くような愛らしい笑顔を間近にして思わず赤面する。

「???…榧さん、熱ある??」

大丈夫~?と首を傾げつつ心配そうに、更に顔を寄せて来る相手にたじろぐ。
長い睫毛がパチパチと瞬き、瑞々しい唇が艶やかに光った。

(…うわー…)

心臓が痛い。顔の妙な筋肉に力が入って笑顔が引き攣る。
俺のそんな様子に気づいた妹姫が、彼女の姉を背中からそっと引いた。

「姉さん、やめてあげて…」

「どうしたの、ラムちゃん???」

全く分かっていない様子でキョトンとする姉姫を、ラム嬢がぎゅっと抱きしめる。

「もーーー!姉さんカワイイっ!!」

どこまでも仲睦まじい姉妹を眺めて、俺はまた微笑った。

12、老人と羽

お喋りが楽しくてついつい話し込んで仕舞い、気づけば月が昇っている。
細く、弱弱しい月明かり。

「済みません、遅くまで引き止めて。」

うら若き乙女に夜分の移動を余儀なくさせた不甲斐無さを詫びて、頭を下げた。
しかし二人は首を横に振って笑い、然程気にした様子もない。…ほっとした。

「私たちはいいけど、榧さん平気??」

旅慣れた乙女達は忍び寄る闇を恐れる様子もなく出立の準備をして首を傾げる。
俺とて、夜は嫌いじゃない。静かで優しい闇は好きである。――だが…

「大丈夫です、有難う。」

俺は強がりを言った。この辺りの怨霊は俺の太刀打ちできるクラスではないし、
じめっと重く締め付けて来る、音のない闇夜だけは…どうしても苦手なのだ。

「うーん、…じゃ、あの山を越えたら帰城術だねっ!」

襤褸が出ない内に手を振って去ろうとする俺の背に、姉姫の声が届く。
帰城術と言うのは冒険者の便利道具、交流の箱が持つ機能の一つで、
最寄りの集落へ持ち主を運んでくれるのだと言う。
経験やレベルに関係なく使用できるらしい。

「だけどすっごく集中力がいるし、無理に時空を超えるから疲れるのよ。」

一度発動させた後は、しばらく休まないと続けて使う事は出来ないようだ。
初めて知る機能に感心しつつ姉妹からその発動方法を教わって、
今度こそ本当に手を振って別れた。

(…美少女に世話をかけっぱなしで情けないやら恥ずかしいやら…)

姉妹の姿が見えなくなるまで見送ってから、溜息を吐きつつゆっくり翼を広げる。
高度はきちんと保ち、忠告に従って対岸の山を目指した。
ひとえに最寄りの集落と言っても、それが目的地に近い方向とは限らない。
場合によっては逆戻りさせられる可能性もある。
山を越えてから使えと言うのはその意だろう。乙女の心遣いに感謝した。

(この辺りだろうか…)

ある程度の位置まで来て、術を発動させる。ぐんっ、と全身に圧力がかかる。

(ぐっ……重っ…!)

思いのほか強い重圧に眉根を寄せた。
箱が集落を検知し時空を超えるまでの僅か数十秒が中々辛い。
耳鳴りが酷くなる。やがて――耳を劈くような音と、歪む景色。
一瞬目の前が真っ暗になって…すとん、と尻もちをついた。
気がつけば、夜露に濡れた芝の上。すぐ傍に川のせせらぎが聞こえる。

(ここは、どこだろう…?)

寝静まった村は薄暗い。集落の、少し外れに落ちたのか…
辺りを見回す。何か生き物の気配がしたように思えて、そちらの方角へ向かう。
道の向こうに怨霊の集団が見えた。

(…これはまずいな。)

そう思って引き返そうと、踵を返した瞬間。…獣の咆哮が、すぐ傍で聞こえた。
振り返れば、もう間近にリーダーウルフの爪らしきものが迫っていて――

(…!!)

痛みに構えて身を竦めた。頭上で悲鳴にも似た雄叫びが上がる。
痛く――なかった。ゴォッ、と大きな物の落ちる音がした。
…恐る恐る顔をあげると、石の破片を片目に受けて悶える怨霊の姿。

「やっぱりお前か!――じっとするな、飛べっ!!」

それから、どこかで聞いたような声。誰だったろう…思い出すより早く空に浮きあがる。
そのままリーダーウルフの視界に入らない所まで飛び上った。

「相変わらず馬鹿だな、甘ったれのお坊ちゃん?」

眼下でリーダーウルフが巣に戻るところを確認し、
ゆっくり高度を落としたところで厭味にぶち当たる。
俺を助けてくれたのは信じられない事に……黒髪の魔導師、karmanだった。

「……有難う…。」

なぜ彼がここにいるのか、どうして助けてくれたのか、
色々聞きたい気もしたが、まずは礼を述べる。

「別にお前を助けた訳じゃねぇよ、お前らが偶々邪魔だっただけだ。」

忌々しそうにフン、と鼻を鳴らして外方を向く魔導師の姿に、
懐かしい人を思い出して泣きそうになった。
でもそれでは余りにも情けないので、俺は黙って俯いた。
するとkarmanは何か勘違いしたのか、少し慌てた様子で
浮き上がる大きな剣の方向をこちらに向けて近寄って来る。

「…どこか、痛むのか……?」

少しだけ心配そうに。――平気で人を傷付ける辻斬りだと思っていた男が。
まるで扱った事のない生き物に戸惑うような風にこちらの様子を窺っている。
それがなんだか可笑しくなって、俺は思わず噴き出した。

「――案外可愛いですね、karmanさん。」

「!!」

上目づかいにそっと様子を覗えば、魔導師は耳まで真っ赤にして絶句している。
それがまた可笑しくて、俺は肩を揺らした。
しかしどうやら彼の機嫌を損ねたらしく、思いきり首根っこを掴まれる。

「…な??」

何を、と尋ねる前に、ぶんっ、と体が揺れた。
魔導師だからそんなに力はないだろうと思っていたが、大間違いだ。
いとも簡単に投げ飛ばされて、向こうの川に落とされた。
咳き込みながら這い上がってくる俺を見下ろし、魔導師が呟く。

「…助けるんじゃなかったぜ。じゃあなっ!」

そうしてそのまま、山の向こうへ姿を消した。飛び去る軌道を視線で追う。

(…全然道の邪魔になんかなっていない。)

態々助けてくれたのだ。――それがなんだか可笑しくて、笑えた。

(あんな風に悪ぶっているが、いい奴なんじゃないか?)

川から上がると濡れた衣服の端を絞って、濡れた髪をかきあげる。
見れば、ここは集落の中心地らしい。立派な家屋にぽつぽつと明かりが見える。

(助けるんじゃなかった――ねぇ?)

用事もないのに足を止めて。村の中心地に投げ落として。

「こんな事があるから、旅は面白い。」

師匠の言葉を思い出す。――確かに、旅は面白いかもしれない。
闇夜の憂鬱が嘘のように朗らかな気分になった。
気を取り直して宿を探そうと民家の間を潜り抜ける。

「おや?…ハネヲかい??」

と、急に声を掛けられた。

(誰?…ハネヲ??)

振り向くと村の少し外れ、大きな屋敷のテラスから、一人の老人が此方を見ている。
大きく手招きをして、また知らない名を呼んだ。
俺に声をかけているようだが…この地に足を踏み入れるのは初めてである。
不思議に思いつつも、首を傾げながらゆっくりと老人に歩み寄った。

Comment

2008.08.19 Tue 01:48  |  No title

あんな美人さんに囲まれたら、誰もかないませんね~!かるまさんもイイ人だし♪
羨ましいです!兄さん!


…羽根男…(笑)

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2008.08.19 Tue 08:13  |  No title

榧さんが赤面してるっw (///∇///)カァ…
帰城術・・・なるほどっ 
だからCTが1時間だったのねぇ~
うん。納得( ̄ー ̄)
karmaさん、やっぱりいい人だったんだ><b

  • #-
  • とぅる
  • URL

2008.08.19 Tue 10:17  |  No title

ハネヲ…w
老人ってやっぱツメレンゲさんのブログのあのじいさんか…

そういや領土テレポ使うと帰城術も使えなくなるんですよね~
同じシステムらしくて、CTが同じ…^^;

  • #mQop/nM.
  • トモイ
  • URL
  • Edit

2008.08.19 Tue 16:48  |  管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • #

2008.08.19 Tue 17:15  |  No title

美女たちとのアブナイ一夜、お疲れ様ですウラヤマシイw
三姉妹・・・ということは、もうお一人は以前お会いしたあの方でしょうか?
みなさんの仲良しな雰囲気が伝わってきましたよー^^
karmanさん、精霊一人をぶんなげるなんて、魔術師なのに力にステータスを振りすぎですねw

次回の更新も楽しみにお待ちしてます!

  • #Ij9WZHRI
  • ツメレンゲ
  • URL
  • Edit

2008.08.20 Wed 23:19  |  No title

美人さんにドキマキしてる榧さん、カワイイ(●≧艸≦)゛
karmanさん、さては榧さん以上のツンデレですね??(ノ∇≦*)
そしてまさかのじいちゃん出演……Σ(・ω・ノ)ノ!w

何かますます目が離せないじゃないですか!!
ものすっごい次が楽しみです♪ヽ(´▽`)ノ

2008.08.21 Thu 18:20  |  皆様、ご来訪有難う御座います!

ようこそ駄文の世界へ!
いまだかつてないほどのコメントと拍手にちょっとびっくり。(笑)

タグさん
いいだろー、羨ましいだろー…ふふふー♪俺の中で何気にとぅるさんは最強。
だって、可愛いんですよ!強いけど、護ってあげたくなるんです!!!(力不足。)
カルマはねー…実は、年齢が…いやいや、これは秘密に。(笑)今後に乞うご期待!

とぅるさん
実際とぅるさんにお会いすると萌え萌え悶える榧です、今晩は。(←ダメな人)
カルマはいい人とは、ちょっと違うんですよ~、でも、榧には良い人かもしれません。(笑)
帰城術、こんな感じのシステムかなと思って書いてみました^^納得頂けて大変うれしいです!

トモイさん
そう、老人は某村で星の研究してるあの人です。(笑)
領土ってやったことない(多分この先もやらない気がする)ので、領土テレポにそんな秘密があったとは知りませんでした!!
今後の参考にさせていただきます!また何か気付くところがあったらぜひ教えてください!!

レンゲ兄さん
…ハネヲはスルーですか、兄さん?
美女たちとの素敵な一夜ではありますが、残念ながら危なくはないですよ。(笑)
もう一人は素敵な女戦士の…出演を乞うご期待。仲良しな雰囲気分かって頂けてよかった^^
カルマの力が強すぎるのではなく、エルフが軽すぎるだけですよー。だって骨格軽いから羽で飛べるとか言う謎の設定…(笑)
更新、楽しみにしていてください、次はあなたの番ですよっ^^b

エスさん
女性は神々しく尊い生き物なんです。ましてや美人は神に等しいです。ドギマギしても不思議じゃないです。(三段論法)
カルマは…確かにツンデレかもしれませんねー(笑)むしろ、ブラック。
じいちゃん出てきたという事は、あの人も出てくるのですよ^^
自作をご期待下さいませ!

皆様、今後ともどうぞご愛読宜しくお願い致します。




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