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13、精霊兄弟

誰もが寝静まった村を星が照らしている。
ロッジ造りの家屋から、その老人は俺を呼んだ。

「おお、ハネヲ、見ない内にすっかり白くなって…」

テラスから身を乗り出し、歩み寄った俺へそんな言葉を投げ掛ける。
――そんな色違いみたいな言い方をされても…明らかに人違いである。

「失礼ですが、何方かと勘違いなさっていませんか?」

老人の視界に良く入るよう、近づいてから首を傾げた。
相手は暫く俺をまじまじと眺め、ポン!と手を打つ。…その間凡そ5分。

「いやはや、こりゃ済まんな。旅の人でしたか。」

気付くのが遅いと突っ込みたいのは山々だが、人生の先輩に失礼は出来ない。
ぐっとこらえて苦笑する。

「いやー、それにしても似とるのお…これで髪が黒くて、目が緑で、
 肌がもそっと健康的に焼けとれば、ハネヲそのものじゃ。」

そこまで違えば立派な他人である。
感心したように頷く老人へ突っ込む気力もなくし、ただ苦笑した。
謎の『ハネヲ』に似ている事が気に入ったのか、老人は俺を家へと招く。
今夜の宿を探していた身としては嬉しい申し出を、素直に受けた。

「雨でも降りましたかのう??」

怪訝な表情で差し出されるタオルを有難く拝借し、家の中を見回す。
広い屋内には天体望遠鏡や天球儀、数々の書類が散乱している。
テーブルから落ちた髪を1枚拾えば、内容が目に付く。

「…東に心、南は柳、西の昴、北が壁…これは…天文学者…?」

ぽつりと呟いた所に、湯気立つカップを手にした家主が戻ってきて笑った。

「いかにも。儂は天文学者のヨシュアと言う者じゃよ。」

白い髭を撫でながら自慢げに名乗る老人より飲み物を受け取ると、
礼を述べてから俺も自らの名を名乗る。

「ふむ、樹木の名か…エルフらしいのう。それで、お前さんはどこに行くのかな?」

進められた席に座し、質問に答える。ある人物を探しつつ見聞の旅をしている事、
これから祖龍の城に向かう事、出来るだけ簡潔にまとめて。

「なるほどな…お前さんはハネヲに似とるが、中身は全く似てないのお。」

俺の話を聞き終えて、ヨシュア翁が笑う。また『ハネヲ』だ。誰だろう。

「ハネヲはなぁ、儂の孫でなぁ…」

此方の怪訝な表情に気づいたのか、天文学者が語り始める。
どうやらその孫と俺の背格好や年齢が似通っているらしい。
孫とは言っても血の繋がりはなく、星の導きで授かったのだと自慢げに述べた。
つまりは、拾い子と言う事だろう。
だが延々と続く話の中で、彼がいかに愛されて育ったか、また、
愛されるべき美しい心の持ち主である事が、良くわかった。

「それでは、拝借いたします。」

老人の話は得てして長い。
結局寝台にありついたのは明け方も近い時刻で、
どうやって眠りについたのかも覚えていない。余程疲れていたのだろうか。
俺は温かな布団に包まり、ただ泥のように眠った。
13、精霊兄弟

話し声が聞こえる。楽しそうな…

「へぇ、早く起きてこないかなぁ?」
「さてねぇ、昨夜は図ンプン遅かったからのぉ。」

若い男の声と、老人の声だ。俺は寝台を出てのそのそと着替える。
着替えながら、まだ寝惚けた頭で昨夜の出来事を反芻する。

(…存外、毎日色々と起こるものだ…)

苦笑しつつも借りた部屋を整え、ドアの外に出る。

「お早う御座います、昨夜は有難う御座いました。」

何時もの如くちっとも早くないのだが、挨拶は挨拶だ。
此方からだと背中しか見えない二人の人物に向かって声を掛ける。

「いやいや、構わんよ。…よく眠れたかね?」

ヨシュア翁が立ち上がって笑った。その背後から…
すらりとした体躯に艶やかな黒髪、静かな印象を与える緑色をした切れ長の瞳。
やや濃い色の肌にふっくらした唇は淡く、爽やかに片手をあげる人の姿。

「初めまして!…榧さんですか?」

彼の瞳の色に似た軍服の上着をピシッと着こなし、
すらりとした手元は手袋で覆われ、颯爽と此方へ向かってくる…
だが――その足もとが短パンなのは何故だろう…。
彼は俺の疑問など露知らず、笑顔で右手を差し出した。
そして『ハネヲ』ではなく『ツメレンゲ』と名乗った。

(う…わぁ…!…何だ、この人…――)

差し出された右手を握り返して挨拶を交わす。
ニコニコした表情を眺めていると、腹の底からウズウズと何かの衝動が…
これは、あれだ、道でうさぎを見つけた時の感覚。

(か…可愛い……!!!)

握手の手をぐっと引き寄せてぎゅっと抱き締め、頭を撫で回したい。
――…やらないが。
とても凛々しい顔立ちなのに、醸し出す雰囲気は優しくて愛らしい。

「あのー?」

俺がいつまでも手を握っている者だから、相手は困った様な声漏らした。

「嗚呼、失礼致しました。」

慌てて手を離し、詫びる。

「いえいえ。」

それでも彼は穏やかな笑みを絶やさない。
この穏やかさの欠片で良いから俺に分けてくれないだろうか。
そんな事を考えて方を落とした所に、何か小さな生き物の気配。

「…?」

ふと見れば、小さな齧歯目がツメレンゲ氏の足元を駆け回っている。
俺の視線に気づいた青年が小さな生き物を抱き上げ、そっと撫でた。

「グラハム君も、榧さんにご挨拶だそうです。」

どうやらこの齧歯目はグラハム君と言う名前らしい。
掌をちょろちょろと走り回るハムスターと、それに話し掛ける主。
小動物もさる事ながら、とにかくこの人可愛いんですけど…。

「初めまして、榧と申します。宜しく、グラハム君。」

気を取り直してハムスターに挨拶をしてから、
小さな前足に指を触れて握手とする。

「…ところで、親族ですか?」
「ぶっ………!!!」

顔をあげて主たるツメレンゲ氏に尋ねれば、彼は思いきり噴き出した。
そして笑いを堪え切れないままに答える。

「そうですね、グラハム君は兄弟みたいなものかも。」

掌に乗せていた小動物を床に放すと、彼はまたにっこりと笑った。
心臓が痛い。…その笑顔は割と凶器なので止めてください。

「兄弟か…羨ましいですね。」

ふと、先日であった美人姉妹を思い出す。
家族が傍にいるというのは、酷く当たり前の事の様で、
だけれどまるで奇跡のような、かけがえのない事だ。
独りで生きている生き物はそういない。
少なくとも、人は単体で誕生する事は出来ない。
水よりも濃い血の繋がりや、それより更に濃い心の繋がりが、
人を育み、人を人として形作る。

「ふむ…そうしているのを見ると、お前さんたちも兄弟のようじゃな。」

不意に、ヨシュア翁が言葉を発した。俺は隣の青年を振り返る。
相手もキョトンとした表情で此方を見た。…確かに、少し似ていない事もない。

「貴方のような兄弟がいたなら、屹度楽しいでしょうね。」

俺は笑って相手へと話を振った。すると彼は意気揚々、

「だったら自分が兄ですね!…兄さんを見習いなさい、弟よ。」

と胸を張って見せる。確かに彼の方が経験豊かな冒険者なのだが、
…愛らしさだけで言うとたぶん向こうが弟だと思う。

「…はい、宜しくお願いします、兄さん。」

けれど、こんな会話が楽しくて、老人と青年の優しい雰囲気が嬉しくて、
俺は短くそう答えた。

Comment

2008.08.29 Fri 01:10  |  ふたりはプ(自主規制)

ついにカッコカワイイ精霊兄弟がっ…!!

  • #-
  • Tagliss
  • URL

2008.08.29 Fri 02:50  |  No title

キタキタキター+.(・∀・).+キターーー☆
半ズボン に プハッw
か…可愛い に プハッw
――…やらないが。 に プハハハ(/∀`*)
色んなところに愛おしさがちりばめられてるわ♡

  • #-
  • Tur
  • URL

2008.08.29 Fri 15:15  |  

これが有名な萌というものなのですよ、榧さん^^

  • #-
  • ホンラン
  • URL

2008.08.29 Fri 22:21  |  No title

人が萌えてる瞬間を初めて見てしまった……
(byハチ○ロ)

いっそそのままツメさんをもふもふぎゅ~しちゃえばいいのに(●≧艸≦)゛

2008.08.29 Fri 23:03  |  No title

なんだか実物よりだいぶかっこよく書いていただいたようで恐縮しております^^
でもやっぱり短パンなんですねww
おじいさんばかりかハムまで出演させていただきまして、大変うれしいです^^!

カヤさんの中で、自分はリトルラビットと同じ存在なのだということもよーくわかりましたww
やっぱりまだ「可愛い」なんですね^^;

  • #qgss3FOs
  • ツメレンゲ
  • URL
  • Edit

2008.08.30 Sat 00:26  |  ふはっw

半ズボン、にリアルに吹いてしまいました…(笑)
ヨシュアおじいさんはこんなにも味のあるお方だったのですね…!

そして、あのなんとも言いがたい萌えという感情をとても的確にこう…表現されているなぁ、と妙なところに感心してしまいました…(笑)
|∀・)モエッ

2008.09.01 Mon 18:25  |  皆様、コメント有難う御座います。

ようこそ、駄文の世界へ。

タグさん
…何を自主規制した!?(分かるけど。)
カッコいい担当=俺、可愛い担当=兄さんだよね?

とぅるさん
わーい^^笑って頂けて光栄です、今回はほのぼの目指してみました!
ふわっとお花が咲いている感じです^^

ホンラン
さすが、普段萌えてばかりいるだけはあるな…。

エスさん
そうしたいのは山々ですが、、ぎゅーなんてしたら運営に訴えられそうなので我慢の子です。TT

レンゲ兄さん
出演、有難う御座います!
いやいや、実物の方が可愛いカッコイイです!!
むしろグラハムくんが本体でしょ?と疑いたくなるのはここだけの話…
ちなみに兄さんは「リトルラビット」とは違います。「なっち」と一緒です!!

藍羽くん
妙なとこ褒められた。www
やっぱりコレは萌えなのでしょうか…。

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