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18、かけがえのないもの

祖龍の城南に宿を確保し、幾つかの依頼を熟して新生活にも慣れて来た。
初めの内はどうなる事かと思ったが、人口の多いこの都市では
有難くも仕事に溢れていて食いっぱぐれる事はない。
寧ろ怒涛のように押し寄せる依頼で辟易する程である。

「どうせ殲滅戦なんかは依頼が揃うんだろうし、俺と組んで仕事しようよ。」

拠点が揃った事で共に活動しやすくなった幼馴染の申し出により、
効率良く仕事を出来るようになったのは良いが…

「じゃあ、朝9時に城西な。」

早起きの苦手な俺には苦痛のスケジュールだ。
出来れば活動は午後からでお願いしたい。
実は昨日も朝8時に叩き起こされ9時には狩りと言う、
健全な半日を過ごして若干ご機嫌斜めである。

「ホンラン、――聞こえるか?」

今日は奴にも用事があるとかで特に約束はしていないが、
明日も9時から狩りだなんて厳しいので、
時間を遅らせて貰うべく交流の箱に手を伸ばす。
と、いつもの穏やかな声が聞こえて来た。

――はいはい、今ヌサさんと一緒だよ、どうした?

思いかけず、愛らしい友人の名が出て驚く。
ヌサ嬢は狐の耳と尻尾を持った妖族の少女で、俺とホンラン共通の友人だ。

「おや、それは楽しそうだ。…しかし、2人で何を?」

――ヌサさんを万獣の要城まで送るトコ。

「…………………………………………………………。」

かの方向音痴弓師が、それ以上に方向音痴の少女を送っていると言う。
思わず頭を抱える。そうして黙っている間にも、箱の向こうでは
あっちだのこっちだの言い合っている暢気な気配があった。

不安だらけ
(あ゛ー…だめだ、これは…)

狩りの約束時間を遅らせるどころか、明日の内に弓師が帰って来る確証もない。
俺はそれ以上何も言わず、気を付けてとだけ伝えて通信を切った。

 
18、かけがえのないもの

方向音痴はもう特技の様な物だから俺の関与する所ではないと、
見捨ててみたものの見捨て切れるものでもない。
午後を過ぎて暇ができると急に気にかかって、俺は部屋を出た。
今日は休業日のつもりだったが…
散歩がてらその辺りまで飛ぶくらいなら別に苦でもない。
――別に、迎えに行くわけではないのだから。
自分に言い聞かせるよう呟きつつ、万獣の要城方面を目指す。

(結構な距離があるな…)

途中水郷村に寄るなどして自分の用事も済ませつつ、地図を確認する。
しかし…ホンラン達より先に万獣の要城へ辿り着いたのでは何となく、
バツが悪い気がして俺は態と開墾者の村に進路を変えた。
この開墾者の村、地図上では小さな村にすぎないが、降り立ってみれば
中々どうして賑わっている。半獣の妖族達が取り仕切る村に足を踏み入れ、
俺は少しだけ身を硬くした。…妖族の男性…特に獅子の姿の者は…
強面で、――俺なんかすぐに捻り潰されそうな気がして、どうにも苦手だ。

「…草ちゃん……」

村の隅を歩きながら様子を眺める俺の耳元に、ふとか細い少女の声が届く。
その方向に視線をやれば、まだ年端も行かない妖族の少女が、
今にも泣きそうな面を俯かせて唇をかみしめる姿が映った。

「…如何なさいました、お嬢さん?」

俺は少女の足元に屈むと、俯いた視線を捉えるように声をかける。
少女ははっとしたように滲んだ目元を拭うと、口をへの字にして俺を睨んだ。

「何か用か?」

随分、古めかしい言葉遣いする気の強い少女だった。
それでも、幼子は幼子だ。
――悲しい表情をする事情を、胸に飼って耐えられるほど、大人ではない。
根気よく訊き出すと、少女は仲の良い『草ちゃん』が病なのだと語った。

「成程ね。では、そのアルダーさんに聞けば、薬が手に入るんだな?」

事情を訊いたからには、手を貸さない訳に行かない。
子供はいつでも自分の身の丈に合わない事を望んで無茶をして、
痛い目を見て学ぶものだが…かけがえのないものを守りたい気持ちには、
大人も子供も関係ない、ただ一生懸命な思いがあるだけだ。

「…手伝ってくれるのか?」

少女…ジルが縋るように呟く。俺は笑って頷いた。
おかっぱの頭をそっと撫でて、言葉を添える。

「借りれる時は他人の力を借りるのも、実力のうちだ。」

こくりと頷く少女に待っているよう伝え、俺は薬調合師アルダーを訪ねた。
聞く所によると、『草ちゃん』の病を治すには、
狂狼の洞窟の付近を根城にするハンターウルフの肝が必要らしい。

「…アンタ、大丈夫か?――ハンターウルフは手強いよ?」

薬調合師にはこれでも冒険者だからと告げて安心させ、
俺は狂狼の洞窟へと足を向けた。

(殺伐とした…光景だな…)

乾いた大地に吹き抜ける砂塵交じりの風に、狼の遠吠えが混じる。
俺は垂糸の丘の群主にハンターウルフの居場所を尋ねた。

「そんなの、柵の向こうにいるじゃないか…だが、手は出さない方がいい。」

おぞましいものでも示すように伸ばす群主の指先には、
うろうろと群れを成してうろつくハンターウルフの姿がある。
手を出すなと言われても…頼まれたのだから、引き下がる訳には行かない。
大丈夫です、と一言告げて、俺は一匹の狼へ風の矢を放った。

「っ!?」

と、狼の目が俺を睨む。攻撃をした1匹だけではない。
その場にいたハンターウルフ3匹が、此方を取り囲むように、
突然襲い掛かって来たのである。
素早い動きの獣3匹に囲まれ飛びかかられ、身動きが取れない!

(…っ――やられる…!)

全身に牙を立てられ、痛みで腕や脚が痺れる。
辛うじて自分にヒーリングをかける事がやっとだ。
それもいよいよ間に合わなくなって、意識が朦朧とし始めた時…

――ドドドドォォォォンッ!

凄まじい音と同時に周囲を無数の雷が包み…
周囲を囲んでいた狼が――消えた。

「ああ、やっぱり榧さんでしたね。
 ハンターウルフはリンクするから危ないですよ?」

続いて、温かな青い光が俺を包む。…振り向いた先には、
何事もなかったような涼しい笑顔で此方を眺める、
仙気を纏った金髪碧眼の精霊師…トモイさんの姿があった。

Comment

2008.10.13 Mon 01:55  |  No title

いまだ方向オンチは治らず…。
ち、ちょっとお散歩しようと思っただけなんだからね!!

ハンターウルフは、どんだけリンチされた事か…良い思い出であります。

  • #-
  • ぬさ
  • URL

2008.10.13 Mon 11:20  |  

ち、ちょっと寄り道しようと思っただけなんだからねっ(>_<)

いつになっても樹下でテレポが見つけられません。敷地のまわりを無駄に一周。

  • #-
  • ホンラン
  • URL

2008.10.13 Mon 20:48  |  No title

第18話おつかれさまです^^!
とうとう因縁のハンターウルフ退治ですねw
ハンターウルフには、ツメも追い掛け回されたおもひでがあります;
物理に打たれ弱く、火力も心もとない精霊師にとっては、鬼門以外のなにものでもありませんねー^^;
トモイさんもかっこよく登場し、続きが楽しみです!

ヌサさん&ホンランさんのコンビがあっちこっち楽しそうに迷っている様がなんともうらやま・・・・・・べ、べつにきつねさんだっこに嫉妬してるわけじゃないんだからねっ><;

  • #Ij9WZHRI
  • ツメレンゲ
  • URL
  • Edit

2008.10.14 Tue 10:20  |  

ハンターウルフ…トモイではクエのあるのに気づかず、だいぶたってからやったので楽勝でしたが、妖精では大分ぬっころされましたねぇ…
かっこよく書かれると、先日39Dで迷子になってたとか言えない>w<
39Dと51Dは迷わなくなる日は一生こない気がしています…

青陣おめでとうございます。やっぱ精霊はこれできないとねっ
ってことはそろそろオッズグラムデビューですねっ黄昏に材料集めにいかないとねっ!
今度いきませう。

  • #mQop/nM.
  • トモイ
  • URL
  • Edit

2008.10.15 Wed 20:57  |  ジルちゃ

ジルちゃの様子、まさにそんな感じだよね~
ウンウン(≧ω≦)b
ハンターウルフ懐かしいなぁ…(*´∀`*)
あたしも一人で挑んで慌てた記憶ありb
それにしても挿し絵があまりにも想像通りなのが何とも言えないわ
ヌサさんもホンランさんも笑顔なのがイイ('∀'●)ネ
色んな意味で…(笑)

  • #-
  • とぅる
  • URL

2008.10.15 Wed 23:35  |  いらっしゃいませ。

ようこそ、駄文の世界へ。

ぬささん
方向音痴って治らないらしいよ…
ちょっとお散歩って程度じゃないでしょ、アナタ…。
ハンターウルフは怖いですよね、俺も暫く苦戦しました。(苦笑)

ホンちゃん
だから、ちょっとどころじゃないだろ…このリアル方向音痴め。

レンゲ兄さん
わー、有難う御座います^^気付いたらもう18話目ですよ。ww
ハンターウルフに追い回されてあせあせしている兄さんを想像…
……………済みません、萌えました……
狐さんだっこがよほど羨ましいらしい…www(メモ)

トモイさん
いや、ほら、トモイさんは榧的にスーパーマンみたいな物なので格好良のですよ^^。
www迷ったんですか、39D…意外だ。そう言う所はとっても可愛いですよね^^
はいー、青陣取りました!お祝い有難う御座います!
材料集め…そんな冒険がありましたね…(汗)
わーい、ご一緒して頂けるなら是非に!!!

とぅるさん
ジルちゃん、子供の癖に爺臭いしゃべり方しますよね。www
ハンターウルフは未だに少々恐ろしいです、かなりやられた…
あの挿絵はかなり前に描いて頂いたもので、ずっと使う機会を狙っていたのです。
方向音痴二人組の無駄な爽やかさが切ないですよねwww

2008.10.17 Fri 05:49  |  遅ればせながら……

クエ受けられるレベルだとまず無理ですよね、ハンターウルフ(。-`ω-)η``ポリポリ
うちの子で苦労せず倒せたのはエス猫くらいだったような……w

にしても……
榧さん、何だかんだ言って優しいんですね(●≧艸≦)゛
やり取りにホンランさんとの仲の良さがにじみ出てて、いつも微笑ましく思ってます^^

  • #-
  • エス
  • URL

2008.10.22 Wed 13:09  |  エスさん

ようこそ、駄文の世界へ。
そうですよね、適正だとかなり厳しいですよね…;;

って…俺は優しくないですよ!!
ただホンちゃんが頼りないので、仕方なく面倒見てやっているだけです!www

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